四月号(R6)

主宰の随筆と選後抄  誌友のエッセイ

随筆    ”古壺新酒” 古賀しぐれ

 

  五百号祝賀会

   

 未央五百号祝賀会が目の前に迫ってきた。百名以上の方々が集うにぎやかな祝賀会となりそう。今からワクワクとしている。

 

 

400号記念(8年前)の写真

   

   

 四百号祝賀会があってから八年の月日が流れた。最近の四年間はコロナ禍での苦難の月日を重ねて来た。
句会の出来ない期間が三年余りもつづき、どうなることであろうかと思い悩む日々であったが、いろいろな方のご協力を得て、
その苦難もなんとか乗り越えられ、今日に至っている。
みなさんとお会いできない時期から始めた一日一句のインスタグラムは四年目に突入し、フォロワーも千人を超えている。

 

 

 

   

 そう言えば去年、桜が咲き始めたころから、インスタグラムに盛んにアップしていた のが、WBC侍ジャパンの熱闘であった。
連日テレビ中継にかじりつき、大谷翔平選手 が決勝に勝利し、グローブと帽子を放り投げたシーンは未だに目に焼き付いている。
五 百号祝賀会の講演には野球解説者の古田敦也氏が来て下さる。おそらく、あのWBC優 勝のこぼれ話もして下さることであろう。

 

 

  

 前回の祝賀会に参加された方々も亡くなったり、今回は参加出来ない方も少なからず 居られる。
その方々の分までみなさまと共に祝いたく思う。さあ、満開の桜の中での祝 賀会を大いに楽しみましょう。

      神の国野球の国のさくら咲く  古賀しぐれ

 

 

 

 

 

 雲母の小筥(春著・悴む を詠む)    松田吉上

 

   悴みし指語り出す駅ピアノ      長ア佳子

 


松田吉上の寸評
    

  

  寒い駅構内に設置されている「駅ピアノ」。そこへやって来た少女が黙ってピアノを弾き始める。
だが、指が悴んでいるのか中々うまく弾けない。 少女は指に息を吹きかけ又挑戦をした。
弾けた?ピアノが滑る様に鳴り始めた。何と見事な腕前ではないか。駅を行く人も思わず足を止め、聴き惚れている。
駅での素晴しいワンシーンを捉えた五七五。「指語り出す」が秀逸。

 

 


 


     悴みし手をつつむ手も悴みし      小林けい


松田吉上の寸評

  

  今回の「悴む」の句では、元旦に発生した能登地震を詠う句が沢山あった。
掲句もその一つであろう。無事救助された二人が、命が助かった事をお互い喜んでいるのだ。
「何もかも無くなったけれど、命だけは助かったね」「よかった。本当に良かった」。
涙を流しながら喜びの握手。二人の手は悴んでいるのだが、一からやり直そうという気概がその底にある。
「手」と「悴む」、双方のリフレインを使って感動の一句となった。

 





心に残る句  小野一泉     

 

 

 

   娘と詣る子安大師や春の雪    渡邉田鶴恵

 

  

  心に残る一句をどうしようかと迷っていた時、玄子先生から「こんなお母さんの句があるよ」…と。
母が亡くなってはや二十年、最近は日々の忙しさに感けて思い出すことも少なくなっていましたので、よい機会だと思い母の句を選びました。

 

    

 

  

  子安大師が祀られているのは西条市小松町にある四国霊場第六十一番香園寺。
地元の人達は親しみを込めて「子安さん」と呼び、いつも賑わっています。
この札所へは何度か吟行でも訪れており、晴れていると遠くに石鎚連峰が眺められ、奥の院まで足を伸ばすと行滝があり、谷紅葉が美しく風光明媚なところです。

 

 


 

  初めて子供を授かった時、安産を願って、母と一緒に参詣したことがついこの間の事のように思い出されます。
その日は、先日に降った雪が境内に残っていて寒かったことを覚えています。
母は退職した後、老後の楽しみのために俳句を始めたようです。切っ掛けは聞いていませんが、きっと、田村道子先生の御導きがあったのでしょう。
俳句を始めたばかり の頃に掲句を詠んでいます。

 

 

 

  

  母のことですから、たまたま春の雪を見たのでそのまま
を句に認めたのだと思いますが、季題がいいなと思いました。
春の雪が希望と明るさを醸し出し、娘を思う母のやさしさと相俟っていい句になっていると思います。
このような句を残してくれた母に感謝です。 晩年、母は娘が近くに居てくれてよかったといつも言っていました。
母の気持が解る歳に私もなってきました。いつまでも元気でいたいものです。

 

 

 


一句鑑賞   松田吉上

吉年虹二の一句鑑賞−句集「桜榾」−

 

聴診もせず杉花粉症と言ふ     虹二

 

  

  

  

花粉症。もはや重病でも何でもなく、一種のファッションなのだ。
ひどいクシャミや鼻水が辛くて医院に駆け込むのだが、「はいはい。薬出しときます」とスピード診察。
その場で思わず口をついて出た言葉が一句となった。
虹二師ならではの諧謔味溢れる五七五である。




     

 

  

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