五月号(R3)

未央の俳句

誌友の雑詠    古賀しぐれ選

 

    ひととせの闇を労ひ雛飾る    山本ひろ

 

    

古賀しぐれの評

  

  

  雛の五連作である。蔵から雛を出し飾り付け、月光に包まれる雛を丁寧に描いている。雛の句は毎年毎年創られてゆくのでどうしても類想的な句となってしまう。そして叙情過剰な華美な句となってしまいがち。しかし、この作者は冷静に雛を眺め、至極客観的に雛を描いている。掲句にしても、「ひととせの闇を労ひ」で何のことかと思えば「雛飾る」でなるほどと言うことになる。一年間狭い雛箱の闇の中に閉じ込められていた雛。一年ぶりにこの世の明るい空間に出された瞬間を作者独特の感慨を以って詠まれた。雛に対する深い愛情が感じられる。他の四句も他の類想を許さない独自性があり、雛を詠む切り口がそれぞれに面白い。バリエーションが豊かな雛の句の連作となった。

 

 

 




    探鳥やレンズ雪間へしぼり込み    吉永佳子

 

 

古賀しぐれの評

   

  「雪間」は春となり雪の間に地面の現れること。春の息吹
を感じる季題である。地面には虫も出てくるであろう、雪間草も生えるであろう。それを狙って鳥たちも集って来る。そこを狙って探鳥のレンズを向ける。理に適った行動である。言葉で言ってしまうと面白味はなくなるが、掲句の詠みがシンプルで一点集中であり、切り口が鋭く面白く描かれている。なるほどと納得させる句の力がある。

 

 





    禍も福も天のまたたき鬼やらひ    田佐土子

 

 

 

古賀しぐれの評 

 

 「禍も福も天のまたたき」そういう風に言われてみると、そうかもしれないと思える。人生なんて天の動きからしたら瞬きよりも短いもの。人の世の禍も福も天まかせなので
ある。禍を嘆き、幸福を喜んでいる間に一生なんて瞬く間に過ぎてゆく。「鬼やらひ」なる習わしで心を鎮め、俳句を楽しんで生きてゆこうではないか・・・。

 




さくらんぼ(高校生以下の作品)   福本めぐみの評

 

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去年よりじょうずになつてスキーする         小五 難波孝太朗

 


 

福本めぐみの評 

 

 去年よりじょうずになったスキー。経験しているのだからじょうずになっているのは当たり前のように感じますが、去年のぎこちなかった自分の心に今年は少し余裕が生まれて積極的になっています。今年の自分は明らかに去年の自分とは違うことを実感しているのです。成長するってすごいことです。

 



 

 

 
えほうまき今年の向きは南南東             小五 倉田智浩

 

 

福本めぐみの評

 

 えほうは恵方と書きます。その年、その年の、神様の来られる方向を示しているそうです。昔は、お正月にその方向にある神社へ初詣にでかけたようです。恵方巻はお寿司屋さんの宣伝で始まったようです。関西では節分によく食べられるようになりました。恵方にさほど関心がなかった私もこの時ばかりは恵方を気にして今年はどっち?とその方向を向き無言で巻きずしをかじります。「今年もみんな元気で過ごせますように」と。作者も家族で恵方を向いて無言で食べたのでしょうか。なにをお祈りしたのでしょう。

 



 


 

 

さとしくんへアシストのパスはるきたる          小二 墨穂乃花

 

 

福本めぐみの評

 

 サッカーでしょうか。「さとしくん」とよびかけてボールをけったらみごとにパスがとおって、さとしくんはゴールを決めたです。はるきたるといいきったところが、ばっちりきまってことばのナイスシュートです。さとしくんというなまえの明るさがはるをよびこむようです。

 


 

 

 

 

さくらんぼの句

  

        さくらんぼの句   福本めぐみの評

 

 

校庭の雪の菩提樹要なる      高三 本城由比奈

校庭に枝を広げている菩提樹。夏は花を咲かせ木蔭を作り秋には実をつけるのでしょう。休憩時間には生徒が集まり勉強の話をしたり、涼をとったり暑い日も寒い日もそこにあって学生たちを見守ってきました。今日は雪が降り積もり誰もいない校庭に静かに立っている菩提樹です。その眼前の姿を改めて学校の要だと感じたのです。堂々とした雪の菩提樹を見てみたいと思いました。

 

給食の海苔を取り合う受験生         高一 山村真市

高校受験の緊張の毎日の中のちょっとした猫のじゃれ合いのようなけんかです。海苔の取り合いで真剣なけんかになるとは考えられませんが、抑え込んで来た感情のはけ口となり気分転換になったのではないでしょうか。こんなことのできるのは男子だけのような気がします。海苔の磯臭さがこの頃の男子に合うようにおもいます。

 

氷解け流れ始めた芦屋川           中一 山村竜暉

今年は寒い日は氷がはりました。流れる川までも凍る寒さでした。北国でしか、感じることのない雪解川の空気感が芦屋川にもあったのではないでしょうか。流れ始めた川音は春の訪れを告げているようです。

 

客を待つ玄関先のチューリップ        中一 奥村瑛太

チューリップは春の代表で誰もが好きな花です。小さな頃から親しんできたチューリップは幼稚園の花壇で、小学校の花壇で、私たちの節目、節目に待っていてくれた花です。そして、今、玄関先に置かれているチューリップもまた、お客様を今か今かと待っているのです。

 

公園のすみっこが好き白すみれ         中一 難波美帆

公園のすみに白いすみれが固まって咲いています。子どもたちでにぎわう真ん中よりも人の通らないすみっこを好んで咲いているように感じるすみれなのです。作者もまたすみっこが好きなのです。こうして、静かにさいている白いすみれに気付き心をよせているのですから。

 

生まれた日建国記念とくべつだ          小六 狩屋堂明

誕生日が建国記念日です。「日本の国の誕生日と同じ日が自分の誕生日」だと思うと、そりゃあ、特別な気持ちが湧いてきます。自分の生まれた事、自分を産んでくれた人の事を、そして、日本の事を考える大切な大切な誕生日です。

 

こたつではみんなの足でいっぱいだ          小六 三原咲月

みんなこたつが大好きです。あったかいですものね。
足を出したいなと思ってもこみあっていてどう足をのばしたらいいか分かりません。布団を上げてのぞいてみたら、どうなってるの?というくらい足がいっぱいこうさくしています。ちょっと、シュールなけしきですね。

 

去年よりじょうずになつてスキーする         小五 難波孝太朗

去年よりじょうずになったスキー。経験しているのだからじょうずになっているのは当たり前のように感じますが、去年のぎこちなかった自分の心に今年は少し余裕が生まれて積極的になっています。今年の自分は明らかに去年の自分とは違うことを実感しているのです。成長するってすごいことです。

 

えほうまき今年の向きは南南東             小五 倉田智浩

えほうは恵方と書きます。その年、その年の、神様の来られる方向を示しているそうです。昔は、お正月にその方向にある神社へ初詣にでかけたようです。恵方巻はお寿司屋さんの宣伝で始まったようです。関西では節分によく食べられるようになりました。恵方にさほど関心がなかった私もこの時ばかりは恵方を気にして今年はどっち?とその方向を向き無言で巻きずしをかじります。「今年もみんな元気で過ごせますように」と。作者も家族で恵方を向いて無言で食べたのでしょうか。なにをお祈りしたのでしょう。

 

さとしくんへアシストのパスはるきたる          小二 墨穂乃花

サッカーでしょうか。「さとしくん」とよびかけてボールをけったらみごとにパスがとおって、さとしくんはゴールを決めたです。はるきたるといいきったところが、ばっちりきまってことばのナイスシュートです。さとしくんというなまえの明るさがはるをよびこむようです。

 

(四月号分記載漏)
花がたのにんじんみつけぞうにかな          小二 墨穂乃花

わあ、かわいいにんじん。花がたに切ったにんじんが、にてあります。どうするのかなと思っていたら、きれいにぞうににかざりつけられました。おしょうがつですから、うつくしくかざりつけられました。いつもとちがうはなやかさにこころが、ぱっと明るくなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   花菖蒲        

                             


 

       

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