平城山句会

令和6年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

初旅や隣の席はパリ美人           末子

寒林の奥へ十五社果てにけり         可子

幣の白粥の真白四方の春           佐土子

杉の秀の千の直立淑気密つ          吉上

春日信仰ひとすぢの恵方道          千草

千歳楠正月の空使ひ切り           千草

磨き上ぐる板間の淑気神楽殿         幸恵

大楠の湯気上る洞寒の入           ますみ

百歳の声美しき初電話            みどり

選者 古賀しぐれ の3句
凍つる鹿射る降臨の杜の日矢
金の日矢射す一月の杉襖
天地を浄め上げたる宮の春

令和5年12月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

地に還るまでをさまよひ散もみぢ       イクノ

生涯を彫師の寡黙息白し            吉上

人力車冬日冬帽のせ走る            佐土子

枯芒ドミノ倒しの日を放つ           幸恵

冬灯彫師の指に集りぬ             吉上

異国語に囲まれゐたる焼芋屋          つよし

枯蓮に枯蓮もたれつつ水漬く          末子

日矢一条根方に届く枯木立           幸恵

靡きつつ光失せゆく枯尾花           寿美

水谷茶屋落葉銀座の一丁目           美栄子

選者 古賀しぐれ の3句
冬の老鹿一徹の面構  
鴟尾の空鴟尾に返して落葉時
がうがうと北風黙通す奈良太郎

令和5年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

秋高し良弁直筆の勢ひ        奈千巴

潜きても浮きても鳰のひと番     吉上

圧倒の黒正倉の冬紅葉        郁子

銀杏紅葉日裏日面色違へ       千草

黄葉且散る魂魄の大銀杏       佐土子

白障子広目天は美男なる       つよし

大綿の鹿の鼻先にて遊ぶ       みどり

大綿の古今の光転害門        千草

戒壇院唐の使者来る小鳥来る     つよし

転害門てふ重厚の冬構        佳音

選者 古賀しぐれの3句
異界へと踏み入る転害門小春
古刹の風格小学校小春
奈良小春ホテルとなりぬ知事公舎

令和5年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

天平は遠くて近し鵙高音        佐土子

柿日和寺苑に隣る保育園        佐土子

邪鬼の戒解かぬ神将うそ寒し      寿美

秋麗や尺に満たざる釈迦如来      幸恵

僧形の神との一会菊の秋        三重子

ホ句の秋句帳に挿む拝観券       みどり

大仏の虚空に遊ぶ落葉かな       つよし

ひっそりとことり塚守る昼の虫     奈千巴

白萩や僧の修業は彼の世まで      千草

静寂の贅露の世の一堂宇        佳音

選者 古賀しぐれの3句
萩芒秘仏へ風の甃
露の世の四隅を睨む四天王
一燭の温顔露の如来像

令和5年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

粟黍の捻りて園は鄙めきぬ       可子

身に入むや昏れぬに点る祠の灯     吉上

走り萩揺れてふてふを惑はする     州子

妖し気に南蛮煙管首もたげ       千恵子

朝露を踏んで奉仕の箒かな       郁子

まほろばの旋律苑の法師蝉       州子

相対す菩薩の秋思わが秋思       吉上

万代の思ひ覗かせ思草         三重子

藤袴何色といふ色のなく        寿美

飛火野に心放てば蜻蛉来る       末子

選者 古賀しぐれの3句
古歌の苑一葉の秋となりにけり
森深くなる寒蝉の遠くなる
古歌拾い草の名拾ふ苑は秋

令和5年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

鵜の動き六方に追ふ浮見堂        郁子

なら町を低く納めて雲の峰        みどり

涼風裡寺領神領たひらげし        佐土子

風涼し清談続く浮見堂          つよし

闇ほどけ極楽坊の蓮見かな        奈千巴

茶屋畳古都の大蟻闊歩せり        純子

禰宜よりも深き一礼鹿涼し        つよし

合歓の花汀子水鳥を偲ぶ風        ますみ

四阿は人緑蔭は鹿溜り          千草

奈良町のゆるき商ひ露涼し        奈千巴

選者 古賀しぐれ の2句
千年の杜のこゑとし蝉凉し
あめんぼう流るる雲に乗りそこね

令和5年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

萍の水面一枚浮舞台          千恵子

率川の底の野仏露涼し         美栄子

報道陣優先鹿の子初披露        郁子

神苑の鹿の子の幸うたがはず      イクノ

観客も母の目差鹿の子生る       奈千巴

神苑の眉目秀麗なる子鹿        みどり

松涼し塔に二人の宮大工        幸恵

風の迷へり飛火野といふ夏野      佐土子

大胆の異人の浴衣歩きゆく       美栄子

白南風の翻したる茶屋暖簾       奈千巴

選者  古賀しぐれ の2句
薫風裡杜の席ある荷茶屋
神の座の茶屋に夏越しの小豆粥

令和5年4月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

残んの桜一斉に風となる         あや

古都の空塔たち緑立ちにけり       美栄子

剥落も仁王の重み花曇          吉上

車夫うらら梶に腰掛け英会話       美栄子

春陰や修復を待つ五重塔         奈千巴

若芝の飛火野雲を降ろすまじ       三重子

流暢な車夫の異国語春闌くる       佳音

魂を鎮めて花の散り敷ける        可子

松の芯修復塔想ふ            幸恵

花冷や来ぬ人を待つ浮見堂        みどり

選者 古賀しぐれの2句
花の果詩歌に宿る君の魂
花の果水はしづかに時湛へ

令和5年3月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

巨いなる闇を鎖せる堂おぼろ        末子

欄は梅が香遠し二月堂           つよし

客待ちの車夫は陣笠春時雨         郁子

修二会冷茶屋の湯釜を囲みをり       郁子

阿加井屋の扉鎖しあり水朧         イクノ

本堂の火種小さし修二会寒         吉上

内陣に祈りの気配修二会寒         純子

修二会の香まとひ良弁杉孤高        佐土子

強東風の良弁杉を駆上る          ゆうこ

大仏の光をもらひ落椿           佐土子

選者 古賀しぐれの2句
郷の土付けて寄進の修二会竹
水取や濁世断ち切る竹矢来

令和5年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

作務僧の箒に崩れ霜柱           寿美

光陰の早や片岡の梅二月          末子

張り継ぎの障子の内の寺仕事        三重子

落椿借りて買ひ手のなき町家        吉上

へつついに火と水の護符寒明くる      吉上

節分会待つ結界に緩みなし         幸恵

元興寺朧梅匂ふ風表            佳音

ジャズ流るここも奈良町春隣        幸恵

神鹿を証す論文出づる春          純子

古町のお洒落なカフェ春ショール      みどり

選者 古賀しぐれの2句
待春の小路は塔の空へ抜け
石仏の千の朝影梅ふふむ

令和5年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

寒梅の白行雲の白に解け           郁子

復元の春日灯籠寒椿             郁子

仏心のふくらむやうに冬木の芽        吉上

四温晴からから笑ふ恋の絵馬         つよし

冷たさに霊気増し行く詣道          幸恵

寒の水旨さうに飲む神の鹿          佳音

鹿のまりにほふ参道春近し          つよし

倒木の空ぽつかりと春を待つ         千草

翳りても飛火野といふ枯明り         吉上

神杉の秀に一塊の雲居凍つる         みどり

 選者 古賀しぐれ の2句
粥柱俳人溜りなる茶店
注連の白火袋の白杜冴ゆる

令和4年12月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

彫師坐す二帖の静寂雪ぼたる        つよし

化粧筆売る極月の古梅園          千草

奏楽のしづかに宮の師走入         純子

神近くなりて昂る寒鴉           吉上

峠茶屋アリゾナよりの紅葉狩        州子

鵙の贄枯れて浄土の杜になほ        つよし

墨の香は古刹のにほひ冬ぬくし       つよし

谷川のさし絵堰の散紅葉          千草

霜月や賞状並ぶ彫師の間          みどり

選者 古賀しぐれの2句
落葉道右大ぶつといふ標
冬日向若草山といふ容

令和4年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

坊礎石規則正しく冬に入る         佳音

神鹿と道連れとなる落葉道         千恵子

文化の日景清門をひもときぬ        末子

正倉院翳の深まる冬隣           ますみ

閑けさや大仏池を辷る鴨          郁子

修復の桧の匂ふ古都小春          ますみ

露霜の眩し朝の転害門           あや

木のぬくみ歴史の重み奈良暮秋       可子

創建の瓦は宝文化の日           可子

暮の秋老鹿残し日の移る          みどり

選者 古賀しぐれ の2句
白鷺の影錦秋の水渉る
正倉院翳端然と冬に入る

令和4年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

勅使門開封儀列初紅葉           静江

秋天へ堂修復の足場組む          佐土子

露の世の殊に薬師に恃むこと        佳音

爽やかに扉放たれ弥陀拝す         佳音

心柱黙の年月身にぞ入む          幸恵

秋冷や水場に果つる獣みち         吉上

塔上る足音さやか宮大工          幸恵

天平の門の重厚鵙高音           水鳥

堂守の語り朴訥柿熟るる          あや

四天王何れ偉丈夫秋高し          州子

選者 古賀しぐれ の2句
老鹿の秋不動なり孤高なり
紅葉の池の面にはじまりぬ

令和4年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

一粒に天地閉ぢ込め露の玉         千草

雨に伏し古名ゆかしき草の秋        可子

老鹿の茶屋の軒借る古都の雨        三重子

結界を知るや知らずや萩の蝶        郁子

朝靄に古都の連山失せ厄日         州子

万葉の誰それ思ふ思ひ草          州子

動かざることが貫録神の鹿         吉上

野の草に光りぬ万の露の玉         みどり

万葉粥食うべ厄日のつつがなし       州子

蜩や天川村に旅装解く           あや

選者 古賀しぐれの2句
萩の雨しづかに蝶をこぼしけり
露よりも幽く萩の走り咲く

令和4年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

飛火野といふ一枚の露涼し          千草

鷺池の風に微睡む合歓の花          美栄子

影涼し池に別の世ある如し          郁子

病葉や幾世重ねし奈良築地          佐土子

蟻の列一の鳥居の影を踏み          佐土子

万緑の取り残したる池一つ          千恵子

打水や奈良の茶粥の古のれん         佐土子

花合歓のかざしの先の奈良ホテル       寿美

おほかたは風の切れ端辻涼し         佐土子

炎帝も風神も来る浮見堂           奈千巴

古都の暑を水琴窟に納めけり         可子

選者 古賀しぐれの 2句
美しき風立ち水亭の日傘
白雲の空青松の塔涼し

令和4年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

鹿の子生る神の日和のただ中へ        佐土子

青楓灯影の招く荷茶屋            郁子

涼風の無尽蔵なり神の苑           末子

春日野の光は力鹿の子立つ          佐土子

拍手もて子鹿の一歩称へたる         可子

杜薄暑風の一等席に鹿            吉上

二三歩は風に押されてゆく鹿の子       吉上

鹿の子の歩に神の声人の声          美栄子

神苑に満つる青の威六月来          佐土子

立つまでは百の目注がるる鹿の子       美栄子

選者 古賀しぐれ の2句
千年の森の時間を滴れる
鹿の斑に日の斑のをどり杜涼し

令和4年5月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

禰宜道の沢を離れず糸蜻蛉          水鳥

鹿煎餅売場倍増子供の日           三重子

若宮の千古の桧皮菖蒲葺く          美栄子

飛火野に頂上のあり風薫る          芳英

宮なれや衛士の詰所も菖蒲葺く        幸恵

神主の直角の礼新樹光            吉上

未来へと平和つなげんこどもの日       千恵子

浮見堂オールの音のして立夏         芳英

飛火野の雲みな遠出夏わらび         吉上

新樹晴丸窓亭の甦る             みどり

選者 古賀しぐれ の2句
松凉し丸窓亭の置きどころ
飛火野の空もろともに夏に入る

令和4年4月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

糸桜風を撮る人詠ふ人            吉上

鳥の鳴き花舞ひ人は戦する          郁子

まほろばの風を乗せたる花莚         佐土子

世を映す池の面の朧かな           郁子

花おぼろ千年を座す廬舎那仏         可子

小半刻水との対話麗けし           幸恵

花の橋ゆき花嫁とすれ違ふ          純子

花の雲出で一艘の漕ぎ出づる         純子

水音は低きへ急ぎ花筏            吉上

先導の鹿振り返る花の道           みどり

選者 古賀しぐれ  の2句
花朧江戸三といふ杜の宿
青松の守る千年の塔朧

令和4年3月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

お目もじの適はず寺の梅を辞す        あや

春風やいくさなき世の阿修羅像        吉上

思ひ出は色褪せぬまま古雛          千草

古文書に記す疫病春寒し           つよし

雛の間の結婚式の間に隣る          三重子

山の辺道鶯の相聞歌             水鳥

陀羅尼助売る店先の春火鉢          ますみ

その幹は龍臥す形梅二月           郁子

潔斎の貼り紙別火坊余寒           寿美

盆梅の四百年の枝垂れやう          佳音

春塵も煤も尊き二月堂            奈千巴

古雛由緒正しきままに老ゆ          みどり

選者  古賀しぐれの2句
安寧を祈り修二会の火の猛る
炎もて浄むる二月堂朧

令和4年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

表札の墨痕にほふ梅の門           あや

粗彫の仏の木肌春日影            吉上

襖絵は応挙の筆致寒の寺           州子

出湯とは地球の鼓動寒の明          千草

風花や墨痕太き祈願絵馬           可子

冬鹿に聞かれてをりぬ私語          佐土子

貴船より茶会へ届く寒の水          三重子

盆梅の鴨居を凌ぎゐる樹齢          寿美

日陰りてよりの華やぎ寒椿          芳英

お山焼き焔畏れぬ神の鹿           みどり

選者  古賀しぐれ の2句
立春大吉歩かばや詠はばや
まつさらな白老幹の梅を噴く

令和4年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

一月の粥に菜の色荷茶屋           佐土子

あぐらとは彫師の正座底冷す         吉上

神域は古代の姿淑気満つ           寿美

粥匂ふ宮ふところの雪見茶屋         吉上

万灯籠千古の寒さ迫り来る          つよし

神鹿に杜てふ宿り六花            千草

人去つて鹿は雪野の石となる         吉上

初雪の巫女挿頭に消えゆけり         奈千巴

禰宜径に戻る静寂寒に入る          奈千巴

寒菊や杜を灯して荷茶屋           千草

選者 古賀しぐれ の2句
杉の闇ゆつくり舞うて雪の精
走り根となり切り神の鹿冱つる

令和3年12月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

古梅園立ちよりもして十二月         静江

風の行く先は磐座枯むぐら          吉上

朝影に曼荼羅なして冬紅葉          州子

一樹もて銀杏落葉の庭となる         ゆうこ

奥山の風の終止符落葉茶屋          佳音

佇むも踏む音もよし散紅葉          水鳥

渓川の一軒茶屋の冬灯            栄子

三月堂菩薩に対峙して寒し          佳音

本日の色に染まりぬ落葉茶屋         奈千巴

冬晴に五重塔の入りこむ           あや

選者 古賀しぐれの2句
きず墨も売ります古梅園小春
懐に百坊を抱き山眠る

令和3年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

紅葉且つ散る千年の水鏡          ますみ

黄葉して空を奪へる一樹かな        佐土子

人と鹿共生の町小六月           千恵子

燦然と鴟尾あり銀杏黄葉あり        純子

正倉院衛士の露けき言葉付き        水鳥

句縁てふ絆の深し小六月          州子

正倉院小鳥の声も厳かに          三重子

通はねば消ゆる禰宜道木の葉雨       吉上

冬はじめ鹿老いるとは眠ること       吉上

一辺は七つの礎石寺小春          佐土子

選者 古賀しぐれの 2句
切株は俳句の小椅子森小春
景清門より天平の黄葉狩

令和3年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

練塀に沿うて影ゆく秋日傘         芳英

苑の一隅秋冷のことり塚          ゆうこ

白秋の青空深し鴟尾眩し          ますみ

名庭の曰くありげな露の石         州子

新蕎麦は売切御免古都老舗         奈千巴

すれ違ふ禰宜の正装秋高し         あや

其の上の百坊跡や鹿の翳          佐土子

終日を木の実しぐれの衛士詰所       吉上

神将の忿怒と聴かん鵙高音         つよし

秋声を聴く瞑目の鑑真像          みどり

選者 古賀しぐれ の2句
露けしや石ひとつ置くことり塚
吉城園鎖しあり鹿の過りけり

令和3年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

木洩日に触るるぬばたま黒揚羽        あや

神将の十指のつかむ秋の冷          吉上

内外に風紅萩の寺門旧る           州子

赤とんぼ人生勝ち負けにはあらず       千草

十五夜や偽りのなき鹿の影          つよし

はじまりは白の告白酔芙蓉          佐土子

秋の蝉唐古遺跡の風千尋           佐土子

かなかなや日暮れ賑はふ地蔵堂        水鳥

興亡の南都一望萩の磴            佳音

貼紙は再休業や秋簾             千恵子

よろづよの神無力なる露の秋         みどり

選者 古賀しぐれ の2句
一斉に逃ぐるが勝ちの稲雀
美術館浮き秋麗の水鏡
 

令和3年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

十一や浮世こもごも孤を深め        あや

水琴窟永久に正調ねむの花         吉上

間近なる鵜飼にに忙し舸子溜        州子

あめんぼう水凸凹にして閑か         千草

桟橋の果はアメリカ夏帽子         佐土子

水無月の満月美しく潤む          三重子

御僧の法話の庭に沙羅落花         郁子

緑蔭に鹿と相席するも奈良         末子

町筋に残る寺の名麻暖簾          千恵子

現世に阿修羅の憂ひ半夏生         奈千巴

選者 古賀しぐれ の2句
湖中句碑下五の沈み梅雨出水
路地夕べ軒風鈴に合歓の花

令和3年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

婆娑と音残し牡丹の崩れ落つ        あや

せせらぎは鹿渡る道若葉風         吉上

はやばやとついり世塵を流すべく      州子

夏足袋や能楽堂のチェロ奏者        千草

ナビゲーションどのみち選るも青葉中    三重子

純白の鹿の子純真なる子鹿         イクノ

杣道てふ近道をとりほととぎす       郁子

おほかたは下闇春日原始林         佳音

舞ふやうにまくなぎ払ひたもとほる     千恵子

端つこの一羽気になる燕の子        みどり

選者 古賀しぐれ の2句
梅雨霧の霽れ直立の杉檜
鳰凉し太陽を蹴り水走る

令和3年5月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

神将の十薬二の面輪青嵐          吉上

絹擦れの巫女の緋袴藤の花         幸恵

彩色の残る石仏新緑裡           可子

一服は白藤懸る神の許           三重子

飛火野へ立夏の風のフーガかな       佐土子

子規の庭保存樹といふ柿若葉        美栄子

夏落葉千古の神の杜の音          水鳥

一客一亭松風の風炉開き          郁子

安居寺塔は基壇を残すのみ         佳音

薬の日奈良町に買ふ陀羅尼助        千恵子

選者 古賀しぐれ の2句
大輪の薔薇よりも野のばらが好き
夏霧の森一雫青雫

令和3年4月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

糸柳風恋ひ影の定まらず           千草

虚も少しにほふ説法万愚節          つよし

山走る桜の走る車窓かな           芹

魂を桜にしづめ盧舎那仏           吉上

濁世へと戻るに間あり花吹雪         吉上

四月一日句会再開なる一歩          末子

山門に花散る花の影の散る          吉上

寺茶屋の厚手の湯呑み春惜む         吉上

春惜む清幽の椅子浮見堂           美栄子

コロナ禍の世はまぼろしのごと桜       みどり

選者 古賀しぐれ の2句
落花てふ光の散華塔の空
花の雲視界の端に塔を置く

令和3年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

飛火野の雲も日も無垢梅ふふむ        吉上

源氏絵の表紙は自筆初暦           州子

芸名は覚悟の証寒稽古            幸恵

冒すごと踏み飛火野の春の雪         水鳥

日脚伸ぶ余呉の戸毎の湖明り         寿美

神の水苑走り来て春の水           末子

円窓亭跡地に香り梅朧            純子

禍も福も天のまたたき鬼やらひ        佐土子

神将の忿怒のうねり冴返る          奈千巴

黒黒と若草山は春の色            みどり

選者 古賀しぐれ の2句
薄氷を踏み日輪を砕きかり
春の鴨水輪はしやいでをりにけり

令和3年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

見覚えの破築地より梅探る          あや

小豆粥啜り生涯一俳句徒           吉上

凍滝の面七彩放ちけり            幸恵

蝋梅に透け青空の硬くなる          千草

初かすみ大和三山神話めく          可子

猪鍋や天城の山は闇重ね           佐土子

農事旧暦農協の初暦             美栄子

神の杜賢者の声の初鴉            水鳥

水占に浮かむ文字吉春隣           佳音

宮址てふ枯野を分けて電車来る        みどり

選者 古賀しぐれ  の2句
春日野の神神めぐり七日粥
寒の鹿射る降臨の杜の日矢

令和2年12月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

駄菓子屋の瓶の飴透く小六月        吉上

水谷茶屋紅葉黄葉を葺きにけり      千草

里小春謎の起点の石舞台          可子

頂は冬日の宴神の山            佐土子

筆塚へ散りゆく紅葉密書めく        佐土子

ならまちは古都の師走の一丁目       美栄子

若草山丸ごと冬日溜りなる         イクノ

百の色いづれ一と色散紅葉         芳英

大琵琶の正客として白鳥来         佳音

奥琵琶の里白鳥も吾も旅寝         佳音

しぐれ主宰の3句
百彩の日向を広げ落葉茶屋
玻璃小春若草山を横たへて
渓谷へずり落ちさうな落葉茶屋

令和2年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

足裏を見せぬ大仏冬に入る         つよし

坊ごとに色を尽くせる紅葉かな       佐土子

風音に神代の記憶返り花          吉上

歳月のぬくもり転害門小春         可子

天平の遺構大様小六月           千草

きら曳きてきらに紛るる鴨の群       千草

法灯のゆらぎの奥の寒さかな        吉上

名園をより名園に紅葉晴          千草

修復の桧皮の匂ひ冬ぬくし         吉上

修復の戒壇堂や冬構            佳音

しぐれ主宰の2句
紅葉且散り天地の神明り
老鹿は翳となりきり草紅葉

令和2年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

白芙蓉染工房の連子窓           あや

蹲踞に古都の秋晴映りける         純子

塔跡の空遠くして赤とんぼ         可子

奈良まちの色なき風の路地迷ひ       あや

塔跡に塔の幻影高し            佐土子

突と塔現るる辻秋高し           水鳥

自粛とはしみじみひとり菊の酒      あや

本堂は風の三叉路乱れ萩         つよし

園丁の手擦れの箒こぼれ萩        吉上

寺巡り萩の余韻にひたりけり       イクノ

しぐれ主宰の3句
再開は弥陀の懐ホ句の秋
今日の月待つ猿沢の塔の水
月の供養挿し蹲の黄昏るる

令和2年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

盆東風や人呼ぶやうに鳶鳴き         あや

歯切れよくつくつく法師鳴き終る      紘子

医の道を断たれし義弟原爆忌        栄子

一枚の闇を響かせ虫の秋          千草

健やかな夫の残影小鳥来る         真津子

色づきて活けてもみたし山椒の実      郁子

風暮れて風の眠りぬ花芒          末子

秋簾独りなる夜の耳聡く          佐土子

夕映えにひときは燃ゆる鶏頭花       ゆうこ

かなかなやふところ深き神の杜       みどり

選者 古賀しぐれ の2句

はじめから逃ぐる算段稲雀

塔へ傾るる雲の波稲の波

令和2年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

巌より鹿しづかなり油照           吉上

打ち返す風の大きく黒揚羽          紘子

万緑の奥より踊り来る流れ          州子

どこまでも河豚着き来る航涼し        幸恵

くるぶしに青き風立つ茅の輪かな       千草

棚田より青水無月の水のこゑ         静江

パイナップル異国の風の夜市かな       佐土子

青芒仏間清しき風通ふ            真津子

潦跳べて鹿の子の母許へ           水鳥

亡き人の句札を吊し釣荵           寿美

しぐれ主宰の3句
水無月の雨もて浄め水の星
庭石の五歩もて渉る水涼し
万緑裡若草山も庭の景

令和2年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

合掌に始まる講座新樹晴            吉上

山暮れて植田の水の暮れ残る          千草

悟りとは例へばでで虫の歩み          つよし

五丁目は山を背に負ひほととぎす        可子

青嵐ダム湖の青を覚ましけり          佐土子

自粛てふ神呉れし刻庭若葉           三重子

緑蔭の切株飛火野のテラス           ますみ

万緑のポケットに座す志賀旧家         イクノ

一瀑へ山道二粁新樹冷             佳音

万緑の闇激つ瀬の音しきり           みどり

しぐれ主宰3句
蜘蛛の囲の在所を暴き雨光る
弥陀の水昏し子目高隠れけり
十薬の路地短調の軒雫

令和2年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

なら町の子供狂言梅二月            三重子

塔跡の空高くあり落椿             静江

曼荼羅に万の金糸や春の燭           佐土子

風花の空一塔の蒼き空             ますみ

春浅し市井の風の寺へ抜け           佐土子

真言のどれも片仮名東風の堂          可子

侘茶の祖称ふる茶会梅椿            三重子

古民家の調度の手擦れ冴返る         吉上

早春の古都青青の阿修羅像          幸恵

神山の空青青と冴返る            みどり

しぐれ主宰の3句
翳るほど白濃かりけり神の梅
梅東風の池日輪の毀れけり
波は日を日は波を追ひ春疾風

令和2年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

正月の山の匂へり奥の宮          佐土子

寒椿巫女の浄むる神楽殿          郁子

鎮もりて漲る淑気梛の杜          千草

水音とは神の歌声若井汲む         つよし

十五社の一社は凍つる石であり       可子

日に漏るる千年の楠淑気満つ        末子

神鹿の影の老いたる寒さかな        吉上

鹿寝まる野に香りあり春隣         吉上

初鴉春日の神になれずとも         つよし

参道の泥濘凍つる億奥春日         紘子

しぐれ主宰の3句
淑気満つ杉の香りの春日道
一月の杜は祈りのホ句の道
三寒の日矢は太古の杜を射る 

令和元年12月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

狐火や水谷今昔物語            千草

獣道けものの幅に冬ざるる         吉上

風神のかよひ路ならむ落葉茶屋       あや

干支を彫る一と間が宇宙冬灯        吉上

奥山の茶店もろとも冬ざるる        みどり

床几まで渓の冷え来る落葉茶屋       吉上

きりもなく奥山よりの落葉掃く       佳音

まろやかに神々抱き山眠る         寿美

鐘楼の無音の寒さ奈良太郎         つよし

巡礼の遠き日手繰る落葉茶屋        みどり

しぐれ主宰の句
銀杏散り百幹の闇明り
二畳間の障子明りに干支を彫る
一幹の底の日溜黄落期

令和元年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

日陰るも照るも一興寺紅葉         千草

うだつ並べ佐保路の町家火事備       幸恵

日向ぼこ寺縁を弥陀の膝とせり       吉上

一院のゆるききざはし冬に入る       三重子

衛士ひとり風の音聴き冬隣         吉上

広々と空待たせをく浮寝鳥         吉上

鹿鳴は杜の心音冬日和           吉上

奥山は何の宴ぞ鹿の笛           つよし

冬ぬくし宝物展の語るもの         佳音

院の名は足るを知ること冬ぬくし      純子

しぐれ主宰の句
太陽の一片となり銀杏散る
蒼天に天辺預け銀杏散る
銀杏散る大仏の空深きより

令和元年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

仏像の木肌のぬくみ小鳥来る         吉上

し尾映り秋水ここに極まれり         末子

水の枷解きつつありぬ破蓮          末子

身に入むや神将に影一つづつ         吉上

踏まれゐる邪鬼の形相そぞろ寒        州子

し尾へ来て天女となれり秋の雲        可子

鳥渡る古都満目の大甍            芳英

鑑真の海てふ砂紋雁渡し           幸恵

秋陰や邪鬼持つ邪心なき瞳          水鳥

人肌の燗のよろしき走り蕎麦         あや

しぐれ主宰の3句
初鴨や池面は弥陀の掌
一院は異郷の香り鱗雲
蓮破れて水に還らん静心

令和元年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

秋の蝶名もなき草を寄る辺とし        奈千巴

万葉の苑歌人の露の声            州子

せせらぎは苑の命脈赤とんぼ         吉上

万葉の苑萩微塵露微塵            州子

古の旋律神の法師蝉             美栄子

推敲は写経の心水澄めり           つよし

橡の実の落ち拾はるる艶やかさ        静江

蛍草朝のかげりありにけり          佐土子

萩の風八一の歌碑は草書体          可子

新涼や音なき森の風の沙汰          水鳥

しぐれ主宰の3句
走り去る白露の水音梨水逝く
寒蝉は風のエレジー君偲ぶ
しろがねに零るる萩の朝雫

令和元年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

一鉢の蓮より奈良の風生るる         佐土子

曼陀羅の如来の後光梅雨の冷え        ますみ

創建を礎石に偲びゐて涼し          可子

依水園青水無月の水の声           静江

ややくねるならまち小路風涼し        芳英

人力車涼し寺町廓町             吉上

路地曲るたびに路地あり奈良涼し       イクノ

古民家のハイカラ料理夏暖簾         千草

令和の字涼し漢方鬻ぐ軒           幸恵

しぐれ主宰の3句
弥陀の風五月雨萩の乱れ解く
弥陀の草引くひたすらにひたすらに
石仏に浄土の湿り梅雨桔梗

令和元年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

結局は白を見てゐる菖蒲園        佐土子

親鹿の子を舐めつくす一途かな      イクノ

満身の力鹿の子の立つ力         水鳥

鹿の子生る生の神秘をまのあたり     州子

直立は杉の本領青嵐           吉上

地下足袋の代掻く支度はじめたる     あや

赤米の早苗神神しく置かれ        三重子

鹿の子生れ世界遺産の命継ぐ       佳音

生れてすぐ神の使ひとなる鹿の子     可子

舐められて子鹿の五感育ちけり      末子

選者古賀しぐれの句
牛蛙神鎮座せる水の闇
鹿の子生れ濁世の視線浴びにけり
神苑の十薬の闇水の闇

令和元年5月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

掛藤探り木の橋石の橋         郁子

歌神よ藤の階降り来たれ        幸恵

じゃこう藤香りに神秘ありにけり    寿美

難所てふ沢も神域藤盛り        末子

緑さす一刀彫に仏の香         吉上

万葉の言の葉かをり藤の昼       あや

神の藤令和の光り透き通る       吉上

藤仰ぐ一山大いなる神慮        佳音

祢宜道の尽きけものみち新樹冷     吉上

万緑に深く沈みぬ浮舞台        みどり

選者 古賀しぐれ の3句

天気晴朗高高と藤の浪
藤浪に溺れをりけり神の虻
藤盛り神の翼となる大樹

平成31年4月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

すでにして令和の鼓動桜東風       あや

天つ風伝ふるさゆれ糸桜         幸恵

花冷の石に至りぬ古都巡り        千草

大和恋ふる外つ国人の花衣        水鳥

言の葉の豊かなる国さくら東風      吉上

千年の幹老ゆるなき花明り        栄子

国原の昨日の遠し花霞          可子

水音の中まで日差しさくら濃し      吉上

あざやかに桜を知らせ水鏡        あや

満開の桜にまさる衣なし         みどり

選者 古賀しぐれ の3句

春日野の大和言葉の百千鳥

青空に果つる飛火野花霞

平成31年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

良弁を名乗れる杉と玉椿        可子

火とならむ覚悟の眼修二会僧      幸恵

寄進竹運ぶ講中鳥曇          あや

名椿へ開かずの寺門開きあり      純子

二月堂掃く春埃煤埃          佐土子

お水取香の並ぶを見たるのみ      寿美

神域の春泥なれば厭はざる       佳音

寺の音椿の落つる音一つ        吉上

良弁杉しばしをけ烟り春時雨      水鳥

夜を徹し修二会の茶屋の二つ竈     寿美

選者 古賀しぐれの3句

参籠の庭火に烟る梅古木

良弁椿堂縁の白草履

梅椿大黒天を祀る茶屋

平成31年2月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

春寒し空を狭めて梛の径        イクノ

一塔の先よりほどけゆく霞       佐土子

神の梅世に汚されてならぬ白      吉上

一輪の梅に整ふ古都の空        千草

梅の香や逢瀬のごとき風が吹き     佐土子

闇動くとは春鹿の一歩より       佐土子

春日道梅へ梅へと逸れにけり      可子

如月の江戸三巡る水の音        静江

天平の塔の寂光柳の芽         吉上

春塵も尊くありぬ四天王        奈千巴

選者 古賀しぐれ の句

泥濘んでをり鹿の道梅の道

江戸三の梅を朧にして灯る

遠き世へ誘ふ宿の梅朧

平成31年1月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

飛火野の光を拾ふ初雀          佐土子

春日野の果は冬日の果ならん       佐土子

大綿の一つに曇る祠跡          吉上

神杉を越え左義長の煤揚る        純子

松籟は神の言挙げ初戎          吉上

参道を行く神官の懐手          芹

初神籤八十の吾に恋成就         あや

神を呼ぶ鈴春を呼ぶ巫女の舞       吉上

千年の大きなしじま寒の杜        栄子

参道の鹿の気配も松の内         水鳥

選者 古賀しぐれ の句

千年の時を留めて杜冱つる

冬の鹿みな福相でありにけり

千年の闇焼べ春日飾焚

平成30年11月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

学舎のチャイム二拍子小六月        佐土子

古都の歩を雲に抜かるる神無月       佳音

泰然と冬を迎ふる天害門          末子

神の鹿露けき影の躓る           吉上

碧落を砕いて鴨の水尾走る         ゆうこ

大寺の日のありながら冬めける       あや

日溜りは銀杏黄葉の画家溜り        三重子

水の綺羅紅葉の色に移りたる        可子

椎の実の正倉院に息づけり         紘子

黄落やどこに立ちても仏の眼        吉上

しぐれ主宰の3句

日を零す雲日を返す鴟尾小春
鴨遠くして自在なる鳰
人影の去るより陸の鴨となる

平成30年10月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

敗荷に対ふる無心なる男          美栄子

秋冷の床の凸凹戒壇堂           ますみ

神苑の一雨ごとの冬支度          吉上

表札の無き家に香り金木犀         三重子

四天王の四隅より秋深まりぬ        紘子

敗荷の青きは雨滴転ばしむ         郁子

木の実落つる音にも聡き神の衛士      吉上

冷まじや邪鬼四態の踏まれやう       水鳥

冷まじや永久に永久見る四天王       可子

秋しぐれ見過ごしさうな蕎麦処       みどり

しぐれ主宰の3句

雨音は邪鬼の哭声露の堂         しぐれ
盤石は大仏の句碑初紅葉         しぐれ
弥陀の池地獄のさまに破蓮        しぐれ

平成30年9月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

石仏の風に生まるる萩の蝶       幸恵

光背の翳の息づく露の燭        吉上

神南備の雲に言問ふつくつくし     佐土子

風の乱地震の乱跡鉦叩        つよし

倒木は祈の形野分後         あや

倒木を潜り春日の水澄めり      三重子

坊守の台風禍跡ひたに掃く      純子

倒木の深き虚より秋の声       吉上

神将の殊に伐折羅の秋の声      可子

しぐれ主宰の3句

神将の闇より解かれ萩の風

露けしや風禍の杉の濃く匂ふ

法師蝉風禍の杜の鎮魂歌

平成30年7月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

神鹿の寝草のにほふ梅雨湿り        吉上

飛火野の雨は斜めに半夏生         良子

樹雫を神の言葉と聴き涼し        可子

梅雨の闇阿修羅と対峙してゐたる         佐土子

合歓の花みな貴人めく浮見堂          州子

夏草の飛火野神鹿の天下          イクノ

鴉とて雅に啼けり合歓の花        州子

飛火野は青水無月のうねりなる        幸恵

いつしかに母と子鹿に距離生れ        あや

雨に色流して合歓の花閉ぢる        みどり

しぐれ主宰の句
万緑裡雨だれ太き浮見堂
天霧ひ神代のごとき山涼し
神の名を角を戴き鹿涼し
雨音の雨脚の消え芝涼し
ねぶの花絹糸を紡ぐ雨の糸

平成30年6月度平城山句会 特選十句 しぐれ主宰選

鹿の子にも野辺に生きゆく掟あり     吉上 

鹿の子に神の一滴雨雫         奈千巴

鹿の子追ふ人のひとみの皆やさし     イクノ

むらさきはさみしき花よ朝曇       あや

万葉のよべの雨の香苔涼し         良子

万葉園古代米なる早苗床        美栄子

神の田の代掻く所作の念入りに      紘子

神の田のいにしえぶりに代を掻く     末子

一水の風に消さるる糸とんぼ       良子

人の子も鹿の子も無垢な眼は同じ       みどり

しぐれ主宰の3句
鹿の子に洗礼ののごと杜雫
雨雫一二三四七変化
十薬に逸れ十薬に沿ふ順路

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