千里丘句会 

令和6年2月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

壷に生け梅見と洒落込みゐたる句座      英恵

紅梅やとろりと話す京言葉          すみ

四五人の媼閑かに梅見かな          鈴郁子

女振りまだあるかしら梅月夜         あや

老といふ目に見えぬもの春寒し        聖子

冴返る見舞ひ帰りの足重く          鈴郁子

冴返る利鎌の月をポストまで        鈴郁子

好物は水菜よ父は京生れ          松郁子

お針子の修業半ばの針供養         鈴郁子

風花や赤き郵便バイク去る          祥子

ご近所へ無理矢理配る大水菜        ふじ

選者 小井川和子の3句
長生きは嫌と言ひつつ菠薐草
水菜鍋独りは眼鏡曇りがち

令和5年12月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

福寿草忘れた頃に咲きにけり        伊都枝

命一つづつに神戸の寒灯          ひろ

眉描きて若くなりたり初鏡         聖子

樏をつけ緊張の脹脛            あや

面白き一書に出合ひ福寿草         伊都枝

とろとろと老の身に合ひ小豆粥       鈴郁子

筆太に「元気やで!」の賀状来る      鈴郁子

侘助の白の眩しさ熟の中          伊都枝

青木の実人生いつも艶めかむ        ひろ

灯明を寒灯を消し一と日消ゆ        智子

寄植の要としたる福寿草          智子

嘗て知る酒場まだあり冬灯         あや

選者  和子の3句
良き句友良き師のありぬ福寿草
老いてこそ人生の味福寿草
冬灯来てすぐ帰る子を送る

令和5年12月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

紅白の蕪を並べアートとし          つよし

ワイン手にポインセチアの二人連れ      すみ

年用意盃は古九谷深みどり          睿子

この日ばかりは銭湯へ柚子湯立つ       智子

父逝きていつしか疎遠河豚料理        松郁子

皿の絵を攫ひゐるかに河豚食ぶ        ひろ

俎板を落つ活河豚の投げ置かれ        順紀

河豚料理誘ひ受けるか断るか         すみ

河豚を売る撫でてみせたり叩いたり      あや

年惜むこぼるる砂のごとき日々        聖子

婆ばかり河豚懐石に舌つづみ         にこ

選者 小井川和子 の3句
鰭酒に不器用な恋話し出す
秋桜子の直筆かかり河豚の宿
河豚の宿生きて朝日を浴びにけり

令和5年11月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

空いつぱい入れて紅葉の写真撮る      順紀

唄三昧なりし友逝く冬銀河         ふじ

一本の大根使ひきる母となり        伊都枝

柊の香に包まるる詩心           つよし

千六本切る俎板の唄ひ出す         ひろ

冬暖一人暮しの一人言           ふき子

庭の木を伐り小春日を満喫す        聖子

肩を出し青首大根見栄を切る        ふき子

大根煮る窓打つ雨の音聞きつ        智子

柊の花は白無垢そつと触れ         つよし

選者小井川和子 の3句
命愛し大根やはらかく煮て
俳号にまだ馴れぬ人冬ぬくし
棘の守りゐる柊の香なりけり

令和5年10月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

三脚で柿とる父を見守りぬ         すみ

齢積む音のあるかに秋深し         美代子

水引の紅濃し新会員迎ふ          恵美子

秋明菊一輪にある和の心          恵美子

紫蘇の実の奥歯にささるこの世かな     つよし

熟柿落つ暮しの音のなき庭に        ひろ

献上の札の添へあり富有柿         あや

御僧の背ナに衰へ秋深し          つよし

説法のあつ渋柿を配らるる         つよし

水引は省略の花ホ句も亦          つよし

選者 小井川和子の3句
尼御前は百二歳なり貴船菊
挿す壷の倒れかかりぬ枝の柿
窮屈にシャツの干されて吊し

令和5年8月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

縁側に乾せる小豆の燥ぎおり        つよし

小豆打つ祈る容に跪き           ひろ

復員の父の小豆を打つ記憶         あや

露店湯の昔語りや星月夜          睿子

零余子飯炊くひよいと子の寄る気配     聖子

払ひより崩れそめたり大文字        伊都枝

煮炊きする火の落つ厨星月夜        順紀

沖縄の辛苦忘れずゴーヤー食む       恵美子

星月夜光源氏の現れさうな         つよし

苦瓜やガマは悲しみ今もなほ        智子

波の音小豆でつくる紙芝居         にこ

最終便発ち空港の星月夜          鈴郁子

選者 小井川和子の3句
星月夜ワインの酔ひのゆつくりと
洗ひ上げ小豆笑つてゐるやうな
小豆炊く少女大人となりし日に

令和5年7月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

温泉も炊事場もありキャンプ村       にこ

鳥越が目覚時計キャンピング        つよし

朝よりの涼風の棲む高架駅        松 郁子

豊穣を祈り甘草田植うる          睿子

木陰より栗鼠走り出るキャンピング     つよし

外つ国の娘とも握手しキャンプの子     幸野

草原の大きな夕日野萱草          智子

大鍋に男の作るキャンプ飯         鈴 郁子

新聞と煙草盆おき父端居          美代子

逞しき息子の腕キャンプ張る        鈴 郁子

選者 子井川和子の3句
指輪撫で妻の日遠くなる端居
ランタンが夜の川照らすキャンピング
一式を借りて一夜のキャンピング

令和5年6月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

命日の墓の藪蚊に刺されけり        美代子

蚊を打つといふは吾身を打つことよ     智子

幼き日蚊帳で聞きたる桃太郎        睿子

吉野川雲雀の揚り汀女句碑         茂

乙女刺す蚊にも好みのあるらしく      睿子

姑娘の忘れし扇かも知れず         つよし

白檀の扇子異国の風の来る         英恵

窓を開け逃がしてやりぬ蚊の命       恵美子

血を吸うて礼も言はずに蚊の去りぬ     つよし

展を衝く不動明王土用東風         らん

選者 和子の3句
一匹の蚊がパソコンを迷うはする
いつの間に夫の置きくれ蚊遣香
山道は黙すに限る竹落葉

令和5年5月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

玉葱の横綱句座にいざ詠まん        松 郁子

村眠る茄子苗に星煌めきぬ         美代子

すきとほる烏賊のつくりの絵皿かな     つよし

茄子苗にはや見ゆ茄子の紫紺色       睿子

空豆の塩茹で大書店先に          順紀

仕事ある幸ゴールデンウイークに      蘭

級長の彼に憧れアマリリス         あや

迷路なる寺の回廊若楓           松 郁子

玉葱のにほひに負けさうなる畑       つよし

アマリリス班入りの喇叭なりしかな     にこ

万緑の中の雅楽の大太鼓          伊都枝

投げキッスしさうに傾ぎアマリリス     つよし

選者  小井川和子の3句
民宿を辞す干烏賊の聯くぐり
流人秘話語り継ぐ島烏賊を干す
玉葱を吊し小諸の虚子偲ぶ

令和5年4月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

豌豆の筋取りながら泣くドラマ       あや

磯遊びをんなは美しき貝探す        松郁子

春眠のさめて瞼のぬれゐたり        あや

都忘れ言ひたきことは言うておく      松郁子

沈丁の香の吉報を運び来る         ひろ

春眠の夢母の居て父の居るて        松郁子

春眠の宇宙遊泳より帰還          つよし

沈丁の角を曲れば我家の灯         あや

二タ三言都忘れに交はしをり        智子

花吹雪浴びつつ臨む建碑式         鈴郁子

隣席の肩春眠に貸し申す          智子

花渓蓀楚楚と女御の立ち姿         睿子

春眠に初恋の人現るるとは         あや

選者 小井川和子の3句
春眠の足の先より溶けゆきぬ
春眠の中に一句を置いて来し
都忘れうすきは人を偲ばする

          

令和5年3月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

恥らひの色を解きけり花通草         ひろ

金色の蕊の際立つ落椿            順紀

朝の日に負けぬ眩しさ雪柳          にこ

藪椿青磁の壺にをさまりぬ          つよし

楽しみは野の何処にでも蓬摘む        美代子

春の山先頭切るは女性騎手          智子

芳しき香を辿りゆく春山路          幸野

パレットに色を多めの春の山         すみ

雪柳こぼるるために咲きにけり        伊都枝

一合の飯を握つて春の山           美代子

戦争を子に話しつつ蓬摘む          ひろ

すつぽりと日向になりぬ春の山        睿子

弁当を見せ合ふ園児春の山          美代子

選者 小井川和子の3句
花瓶より噴き出してゐる雪柳
雪柳ジャンプしてゆく園の風
亀鳴くや俳論読めば眠くなる

令和5年2月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

胸張れと医師に諭され春の雪         聖子

針箱の整理私の針供養            幸野

若者の茶髪私の針供養            睿子

嘘ならぬ針千本を祭りあり          智子

食べるには惜しき数なり蕗の薹        伊都枝

城称へ青空称へ梅見人            智子

市役所の前なる売地蕗の薹          順紀

白梅にいつか静もる句座となる        つよし

春菊の香の溢れゐる鍋料理          鈴郁子

片栗の花舞ふやうに翔ぶやうに        順紀

選者 小井川和子 の3句
風呂場より口笛バレンタインデー
嗜むといふ酒となり蕗の薹

令和5年1月度 千里丘句会 特選句  選者:小井川和子

洗はれて根の先までも美しき蕪        恵美子

歓迎は蠟梅の香よ新会員           松郁子

息かけてやればほころびさうな梅       美代子

蠟梅の匂ひ溜りとなりし部屋         あや

丹精のまこと艶やかなる蕪          松郁子

梅ふふむ小さき鳥のをちこちに        すみ

蠟梅の人の動きに香りたつ          あや

顔映るほど蕪洗ひ料りけり          智子

瀬戸の海より早梅の島を見る         睿子

若宮の宝物拝見梅早し            にこ

選者 小井川和子の3句
とこしへの隠しごとあり竜の玉
蠟梅や美しき言葉を探さなむ
蠟梅や溜息つけばまた匂ふ

令和4年12月度 千里丘句会 特選14句  選者:小井川和子

生き抜くぞ三年日記買ふからに        松郁子

一年の漢字は戦年惜しむ           松郁子

十年を三年日記を買ひたる日         にこ

百歳の謂れを秘むるちやんちやんこ      恵美子

日記買ふ手書きの文字をいつくしみ      美代子

日記買ふ一日一句続けんと          松郁子

百歳の手仕事残るちやんちやんこ       恵美子

日記買ふやがて句帳となりぬべし       つよし

ちやんちやんこ昭和一桁減りにけり      美代子

生きざまのほのぼの匂ふ古暦         にこ

日記買ひ父母の忌日をすぐ記す        鈴郁子

枯草のわづかに残るそよぎかな        美代子

愛犬に似たる表紙の日記買ふ         智子

つぶやきを拾うてくれる日記買ふ       智子

選者 小井川和子 の2句
日記買ふ女子高生に挟まれて
日記出づ隅に積まるる世となりぬ

令和4年11月度 千里丘句会 特選14句  選者:小井川和子

お茶しましょ小春日和を誘いひ合ひ       恵美子

俳聖殿賑はふ頃や翁の忌            聖子

柊の香に自販機の茶を買ひぬ          松郁子

大根洗ふ比良の豊かな恵み以て         恵美子

柊の香に頷いてゐる水分の一水に        智子

腰痛も連れて暮しぬ花八手           聖子

大根洗ふ藁束もて念入りに           ひろ

遅れ着く花柊をおく句会            聖子

選者 小井川和子 の2句
柊の通り過ぎれば忘るる香
気の利かぬ性は変らず花八手

令和4年9月度 千里丘句会 特選14句  選者:小井川和子

兼好の一節を以て秋惜む           ひろ

殊の外短き秋を惜しみけり          恵美子

一詩集残したる人身に入みぬ         蘭

コスモスの揺れる里にも英語塾        蘭

我が夫への恋の句詠まむ十三夜        伊都枝

養生の芋粥今日も母に炊く          あや

菊活けて欠席多き句座なりし         恵美子

薩摩芋しのぶ戦後の父と母          あや

山装ふ手動で開ける日高線          蘭

木犀の香を継ぎゆく邸町           智子

高原は人影もなし秋惜む           鈴郁子

日の落る果てなき台地秋惜む         すみ

甘藷掘る園児蔓持ち一二三          睿子

藷だけで命繋ぎし頃のあり          聖子

 選者 小井川和子の3句
重きこと詫びて甘藷を呉れにけり
丸く刈りある木犀の香の丸く
金木犀塀越し拝む屋敷神

令和4年9月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

枝豆の皮の増えゆく釣談義          鈴郁子

北の地の玉蜀黍の粒揃ひ           恵美子

札幌は楽しもろこし立食ひす         智子

川べりの夕日波打つゑのこ草         智子

ついと揺れ何か告げたき吾亦紅        つよし

碁笥に手を入れて長考秋の夜         ひろ

揺れてゐても媚びるあらずゑのこ草      あや

琴爪のジャズ弾きをり夜半の秋        ひろ

一夜ごと風の違ひて秋進む          伊都枝

母さんにボーイフレンド猫じやらし      あや

選者 小井川和子の3句
読み終ふが惜しき一冊秋の夜
秋の夜やひとりの湯浴みひとりの飼
もろこしを食ぶ顔を見て娶りけり

令和4年8月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

母逝きし歳まで生きて盆用意          聖子

スーパームーン墓参帰りの車窓かな       にこ

書にて知る子規のロマンス星祭        松 郁子

五山送り火幽明にに我が身おく         睿子

送火や千古の闇の生まれたる          つよし

この星に生れ端居して九十年          美代子

墓洗ふ四つの御代を生き抜きて         美代子

子に語る吾の五歳の誕生日           すみ

選者  小井川和子 の3句
ゆくほどに見飽きて畔の赤まんま
送火のあとや篠突く雨となる
遺児席に坐る八月十五日

令和4年7月度 千里丘句会 特選9句  選者:小井川和子

水鉄砲迷惑顔の庭の犬             蘭

風鈴やひとりぐらしの音として         あや

片陰に入りて影も休ませる           美代子

バリ島の旅の風くる貝風鈴           すみ

甘藷植う家庭菜園狭くとも           恵美子

ハイウエーエンジン音消す夾竹桃        にこ

潮焼の漁師の笑顔船戻る            あや

長いもの苦手と言ひて鰻食ふ          蘭

老ぬれば二度わらしなり天瓜粉         恵美子

選者 小井川和子 の3句
南部風鈴やつぱり我は日本人
地を掘れる穴よりにゆと日焼の手
藷挿して独り暮しを押し通す

令和4年6月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

駅前の長屋解体梅雨晴間             あや

網戸より侵入したるカレーの香          松 郁子

山法師白は夜目にも遠目にも           松 郁子

瑞穂の国なりこの梅雨のあればこそ        つよし

楝散る土蔵のやうな離れかな           あや

たわいなき話が楽し網戸かな           睿子

網戸開け雨の細目を確かめて           すみ

在せば米寿なる夫蚊遣香             聖子

香を放つ空を隠して花楝             すみ

住み馴れて古網戸なる風やさし          聖子

難き世を少し隔てて網戸かな           恵美子

襖みなはづし公民館の句座            すみ

網戸して座椅子の位置を替へにけり        恵美子

選者 小井川和子 の3句
墨衣ぬぎし娘とをり網戸風
猫にまた開けて網戸の用なさず
早過ぎて待つはよろしき梅雨晴間

令和4年5月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

十艇の救命ボート船薄暑         智子

長き貨車鉄橋渡る麦の秋         美代子

醤油蔵匂ふ古町夕薄暑          あや

連休や賑はひ戻る街薄暑         聖子

十薬の匂好きとか嫌ひとか        恵美子

玉川のきらめきに沿ひ花卯木       智子

卯の花や岩そのままの芭蕉句碑      にこ

転勤の握手の篤く駅薄暑         ひろ

墓に沿ひ雲より白き花うつぎ       すみ

十薬と軍手と並べ干されあり       智子

選者  小井川和子 の3句
十薬や人と話さぬ日の暮るる
卯の花や神事はいつも風の中
イスラムのビジャブ巻く人街薄暑

令和4年4月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

父母の終の住処の杉菜かな          郁子

句を詠まん千里の丘の杉菜なら        つよし

杉菜の茶飲めば一日命延ぶ          にこ

両の手で受け止められぬ白牡丹        にこ

河川敷夫と連れ立ち花曇           蘭

杉菜生ひ高層マンション増えてきし      恵美子

豆の花降り出す雨に揺れどほし        あや

都忘れ安徳帝は海深く            にこ

遊園地辺り一面杉菜かな           美代子

束ねれば杉菜も美しと思いひけり       恵美子

選者小井川和子の3句
雨となるまへの牡丹を剪りにけり
都忘れむかし芸妓の庵主かな
春の雲潦へと降りにけり

令和4年3月度 千里丘句会 特選11句  選者:小井川和子

父の背に目覚めてゐたり朧月         伊都枝

君が袖振りたる野辺の青き踏む        ひろ

青き踏み大地の声を聴かんかな        つよし

国境のなきが仕合せ青き踏む         あや

回りゐる広告塔の陽炎ひぬ          郁子

部屋隅に追ひやられたる春炬燵        郁子

吾は庭母は機嫌の春炬燵           すみ

踏青や爺と婆とが手をつなぎ         蘭

明日あるを信じ種蒔く老の畑         恵美子

ウクライナピースピースと揚雲雀       つよし

七曜のなき友誘ひ青き踏む          美代子

選者 小井川和子 の3句
晴れし日の家はからつぽ春炬燵
読みもせぬファッション雑誌春炬燵
すすみゐる水門工事青き踏む

令和4年2月度 千里丘句会 特選12句  選者:小井川和子

上出来の茹で加減なり菠薐草         聖子

万華鏡をとび出す瑠璃や犬ふぐり       あや

村の家又ひとつ消え種物屋          聖子

春寒しつぼみほどなる詩心          つよし

生産者明記筑波のほうれん草         恵美子

犬ふぐりのつそりと猫通り過ぐ        智子

春しぐれラインに届きたる遺影        恵美子

春寒し長命といふ試練あり          美代子

戦乱の国の地虫の出でにけり         つよし

犬ふぐり明日の元気をもらひけり       恵美子

白梅にホ句紅梅に和歌捧ぐ          つよし

犬ふぐり駅にて紅をさす媼          蘭

選者 小井川和子の3句
天神の梅咲き絵馬の増えてくる
吟行は四五人が良し犬ふぐり 
野路ならばところ選ばず犬ふぐり

令和4年1月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

さ庭へと降臨の舞初雀            つよし

気安さの二十日正月酔ひにけり        ひろ

松竹座一等席の骨正月            あや

着膨れの自分愛しと思ふとき         あや

骨正月始末心を忘れまじ           恵美子

数珠として夫に手向けん竜の玉        あや

探梅行なかの一人の真知子巻         智子

生ひ立ちに貴賤はあらず竜の玉        ひろ

リモートで二十歳の春を乾杯す        聖子

稚泣くは生きる力や竜の玉          恵美子

齢積む音の密やか骨正月           美代子

観る人の心を映し竜の玉           ひろ

選者  小井川和子 の3句
心にも一粒欲しき竜の玉
寺の犬すぐに鳴き止み竜の玉
低く飛ぶこと繰り返し寒雀

令和3年11月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

マスク同士瞳が語り合うてをり        ひろ

ひと日暮れマスクに残る疲れかな       恵美子

爪先を最後に毛糸編み終る          あや

白菜を漬くるに予約せし昭和         すみ

白菜の半分占める野菜室           恵美子

病抜けしたり柊薫りけり           すみ

模様生る程に楽しく毛糸編む         恵美子

白菜のひと塩のみの旨さかな         恵美子

大鉢に白菜漬を茶請けにす          すみ

愚陀愚陀と白菜煮ゆる鍋の音         つよし

選者 小井川和子 の3句
毛糸編む国会中継聞きながら
見せられぬ涙マスクに落しけり
短日のこころ切へ庭箒

令和3年11月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

朝凪の窓新海苔の宿の膳            和子

金賞の帯の新海苔なればこそ          郁子

素手で守る古刹の庭師冬紅葉          恵美子

新海苔の届き季節の動き知る          ひろ

吾子が来るただそれだけに炭をつぐ       美代子

時雨忌や古き歳時記繕ひて           聖子

見頃よと山が呼びをり冬紅葉          ひろ

新海苔の香り纏ひて塩むすび          郁子

句を学ぶ事の生き甲斐冬紅葉          聖子

いつときの夕日に映える冬紅葉         郁子

選者 加藤あや の3句
落城の昔ありけり冬紅葉
花八手夫なきままの幾年に
埋火を起して案内峠茶屋

令和3年10月度 千里丘句会 特選8句  選者:小井川和子

駅前のみちのく訛林檎売           すみ

風の押し風の誘ひ秋の行く          ひろ

行秋の万象老いを隠せざる          つよし

息災が唯一の取得蜜柑食ぶ           美代子

小説を膝の上に伏せ林檎食ぶ         ひろ

秋の暮町のレトロな写真館          すみ

セーターの胸珠ほどの子を抱ける       あや

横浜と神戸は似たり星月夜          よし子

選者 小井川和子 の3句
林檎むくこれからの幸小さくとも
林檎むく明るくなりし独りの灯
行秋の赤子に聴かすシューベルト

令和3年9月度 千里丘句会 特選8句  選者:小井川和子

迷ひ猫甘えるしぐさ草の花           伊都枝

推敲の句帳にはさみ秋扇            美代子

瓦屋根続く一村草の花             あや

やり直し出来ぬ人生草の花           よし子

少女らの泣くほど笑ひ秋桜           聖子

秋灯窓に家族の物語              ひろ

秋の灯の小さくこぼれ路地酒場         あや

杖二本使ふリハビリ草の花           恵美子

選者 小井川和子 の3句
若き日の日記の誤字よ秋灯下
スカートの裾に触れたる草の花
軒並べ寒天長者曼殊沙華

令和3年8月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

加齢てふ身に丁度よし新豆腐          美代子

大夕立ビルも駅舎も消えにけり         郁子

かなかなに歩を止めにけり無縁坂        あや

スーパーの棚に今日より新豆腐         あや

生醤油でまづ半分を新豆腐           すみ

かなかなの声に消さるる電話かな        聖子

当世や宅配便の新豆腐             恵美子

犬散歩夕焼け空と月の空            にこ

ナイターや二台のテレビまだ足りず       にこ

選者  小井川和子 の3句
一葉落ちふと考への変りけり
嫁がぬ子にも何も言ふまい梨をむく
おほもとは比叡山の水や新豆腐

令和3年7月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

日記の上横切る蟻を待ちにけり         よし子

諍ひも元気の証トマト食ぶ           恵美子

卒寿越し生きぬく髪を洗ひけり         美代子

髪洗ひ心の乱れ流しけり            恵美子

空調の風に扇の風を足す            ひろ

トマト赤置くよりサラダらしくなる       ひろ

風蘭の香りあふるる句座閑か          吐夢

遅れ来て流るる汗を言葉とし          あや

籠り居の明日は句会よ髪洗ふ          吐夢

トマト食べ娘よけふも出かけるか        すみ

選者 和子 の3句
風蘭や坊守らしくなりたる娘
風蘭のほんのり纏ふ白き闇
夢の中にて会へるかも髪洗ふ

令和3年6月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

雨を描くこの蝸牛主題とし           すみ

夏蝶のサンバの庭となりにけり         つよし

にんげんのひと日ででむしのひと日       ひろ

目標へ歩め歩めと蝸牛             郁子

風のきて奏づる和音玉簾            つよし

父の日の特に笑顔の遺影かな          すみ

みちくさの人生もよし蝸牛           美代子

白服の一波二波ゆく登校日           ひろ

薫風と君来る自動ドアの開き          ひろ

貼り迷ふ美しき切手や梅雨籠          恵美子

選者 和子 の3句
蔓のぼる生れしばかりの蝸牛
でで虫やわが家の補修先延ばし
田畑の中の参道風薫る

     

令和3年5月度 千里丘句会 特選10句  選者:小井川和子

鼻緒擦れせし指さすり祭あと          すみ

芍薬の名残りの香あり昨日今日         伊都枝

祭髪紅のほんのり大人びて           すみ

さ揺らぎは風の言伝て姫女菀          あや

だみ声が歓喜のしるべ初蛙           つよし

姫女菀の風くるバスの停留所          ひろ

姫女菀には青空とそよ風と           あや

闇さらに深くなりゆく祭笛           ひろ

衣替へ毛穴の中まで甦る            つよし

ワクチンの接種確定夏に入る          聖子

選者 小井川和子 の3句
表情をどこかへあづけ祭笛
猫の番させられてをり祭鮓
姫女菀分け湾処へと鷺を見に

令和3年4月度 千里丘句会 特選7句  選者:小井川和子

すはないの息をはくのよしやぼんだま      ひろ

子ら走りつつじの陰にかくれんぼ        恵美子

青空へ貰はれてゆくしやぼん玉         美代子

祇王寺の尼の半生竹の秋            吐夢

聖火リレー桜蘂降る我が町へ          郁子

新しき街のシンボル花水木           聖子

竹の秋変はらぬものに里言葉          あや

選者 小井川和子 の3句
未来とはみんなにありぬ石鹸玉
しやぼん玉つぎつぎ空を濡らしけり
この街の人みな若し花水木

令和3年3月度 千里丘句会 特選12句  選者:小井川和子

卒業を異国の父に伝へけり         郁子

啓蟄や空家解体始まりぬ          よし子

苗木とて出自隠さぬ形かな         つよし

くらしぶり見ゆ実生なる苗並べ       あや

万両の苗コロナ禍を植ゑてみし        すみ

青ぬたや逢へば昔のすぐ戻り         あや

苗札の丈万両のやつと超す         ひろ

日の幾重影の幾重の初桜          あや

花韮を踏まずば行けず地蔵尊        よし子

青ぬたや母に何もかも近づけず       美代子

青ぬたや父は上戸で夫は下戸        恵美子

菜の花や湖より立ちし近江富士       美代子

選者 小井川和子 の3句
あとがきより開く小説水温む
青ぬたや恋をきのふのごと話す
言の葉は弱くて強し花あけび

令和3年2月度 千里丘句会 特選十句  選者:小井川和子

朝まだきパン屋の灯り春しぐれ        郁子

踏絵なきこの世喜び礼拝す          郁子

水菜煮る京のおばんざい風に         聖子

外湯へと下駄からころと春時雨        ひろ

コロナ禍や春の風邪とてあなどれず      聖子

人の温みベンチに残り下萌ゆる        美代子

水菜洗ふ水のはしやいでをりにけり      ひろ

野に寝転び世界は我と雲雀のみ        つよし

選者 小井川和子 の3句
芽柳の降るとは見えぬ雨となる
水菜一株重さうな軽さうな
回向終へ帰りゆく子ら春時雨

令和3年1月度 千里丘句会 特選十句

放浪の吾は山頭火日脚伸ぶ          つよし

人の世を物知り顔の寒鴉           恵美子

日脚伸ぶファーストシューズの子の一歩   聖子

寒鴉鳩に割り込む一歩かな         美代子

暮れぎはの黒き軍団寒鴉          聖子

妹とおしゃべり弾む女正月         聖子

チョコレート一粒二粒日脚伸ぶ       恵美子

コロナ禍を独りもよろし寝正月       聖子

見送れる塵収集車寒鴉           すみ

初夢やベニスのゴンドラに乗りて     伊都枝

熱燗や夫に愛憎抱きし日日        すみ

約束のごとく雲垂れ寒の入        恵美子

愛犬の食器を磨く五日かな        よし子

冬日向一畳あらば足る暮し        ひろ

球児らの坂駆く寒稽古          美代子

選者 小井川和子 の3句
寄せありし藻屑をあさり寒鴉
枝の上の向きそれぞれに寒鴉
こうひの豆挽く香り日脚伸ぶ

令和2年12月度 千里丘句会 特選十句

マンションの谷間の落暉日短         恵美子

しぐれよと片しぐれよと言ひ重ね       和子

老いたれど御洒落は宝春支度         郁子

失せものは出るときに出る日短        和子

日向ぼこしてゐてさゆる地獄耳        美代子

コロナ禍の収束遠し暮早し          美代子

まあええやんと短日の姉妹旅         伊都枝

記しなき令和二年の古暦           恵美子

未知開くはやぶさの砂冬銀河         伊都枝

高僧の沈思黙考暮早し            つよし

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