未央誌友の俳句集(住吉句会)

平成29年6月度  住吉句会特選十句

植田はや命漲る水輪かな     佳山良子

神事待つ代田の水の引締り     加藤あや

住吉の芸能総出御田祭      中野美栄子

神宿る玉苗なれば懇ろに     早川水鳥

玉苗を投げて田水を起しけり       西尾澄子

宮一切御田づくしの一日なり     田淵さく羅

漆黒の威風堂々御田牛       小玉ヒロ子

大役を請け京よりの御田牛       照好

御田植の神の牛とてにほふもの      奥村つよし

蛇に神の日ざしのあり余る         山崎和華

 

平成28年1月度  住吉句会特選十句

神名備の鳥も畏み弓始    育栄

砂利打つて地の邪気払ふ弓始    娃穂

飾凧住吉句会羽ばたきぬ    手毬

寒風を切る鋒の甲矢乙矢    あや

初句会清めの雨の二三粒    清子

天地の邪気を射とめし弓始    育栄

祝詞受く眞白なこころ初句会    澄子

平安の世に誘はれ弓始     さく羅

拒まざる事が嗜み年の酒    和華

神宿る羽音となりて的始    清子

 

27年7月度 住吉句会特選十句

神よりの風に賜る青田波    美栄子

少年の声涼風となり届く    真理子

女とは齢とらぬもの星祀る    和華

緑蔭に仏顔して座りけり    千鶴子

二句碑に恃む一願星迎     恭生

願ふより七夕笹に謝すこころ    澄子

のうぜんの朱を憂しと見て美しと見て    水鳥

全身を見せざる神の蛇であり    真理子

千年を語り継ぐかに蝉鳴けり    良子

住吉の空磨きをり水馬    澄子

 

26年1月度住吉句会特選十句

風雅の座掛蓬莱に改る   孝子

雨も亦尊し宮の松の内   水鳥

お厨の寒し神馬の去にたれば   和華

掛蓬莱ゆるやかな時賜りぬ   せつよ

白梅や百の蕾のよそよそし   道子

去年今年なく住吉の松ゆたか   良子

神苑の黄昏に似て寒の雨   せつよ

反橋をのぼりつめたる淑気かな   良子

生き様を一句にこめて初句会   淳

祈祷受く楠珺社句の恵方なり   幸枝

 

 

25年12月度住吉句会特選十句

参道に光を曳きてしぐれ過ぐ   けい

手袋の衛士の所在のなき歩み   真理子

黄落の光を纏ひ風まとひ   広子

反橋の天辺残る時雨あと   幸枝

神域の光となりし冬木の芽   広子

冬ざれや楠の走り根化石めく   淳

散り敷ける色を楽しみ宮落葉   水鳥

をちこちの無言の奉仕落葉掻く   和子

宮居とはしぐれ宿りに事欠かず   澄子

 

 

 

25年11月度住吉句会特選十句

母の味昭和の味の吊し柿   和華

反橋を彩り七五三日和   水鳥

受け止めし冬の日分ち神の樟   孝子

袴着の全身で振る神の鈴   恵美子

反橋といふ晴舞台七五三   護

干柿はまつたり句座はほつこりと   澄子

反橋に引きずつてゆく千歳飴   照好

七五三様のお通り太鼓橋   澄子

住吉は変りなき街冬日和   さく羅

髪置に衛士の視線動かざる   泉

しぐれ主宰の三句

青空は神の祝福七五三

袴着に立ちはだかりし太鼓橋

刈田とは雀の天下なりしかな

 

 

 

25年10月度住吉句会特選十句

一と嵐過ぎし神苑木の実雨   恵美子

どんぐりの掃き残りけり神の庭   明子

稔田に風の狼藉なきことを   祥子

住吉の神の御空ぞ野分晴   育栄

住吉の案山子詣となる一日   和子

句座てふはおほかた女藷の秋   和華

落葉掻き朝一番の宮仕事   明子

住吉の雀と案山子仲の良し   手毬

一途なる俳諧ごころ秋惜む   ちず子

完治謝す深き一礼野分晴   恵美子

 

しぐれ主宰3句

神の松翳美しき野分晴
天へ鳥放つ大楠野分晴
小鳥来る人来る楠が御神体

 

 

 

25年7月度住吉句会特選十句

軽鳬の子に大海のごと御田かな   水鳥

緑陰や洗心の風神の風   幸枝

園児てふ汗のかたまり列をなす   澄子

神官の白衣涼しく句座に着く   水鳥

住吉の松籟涼し禰宜涼し   広子

梅雨明けの沸騰阻み神の杜   護

軽鳬の子の御饌田の天地まだ知らず   広子

松風の興す青田の波ゆたか   育栄

炎天やたのむ楠蔭松の蔭   靖子

打水てふ禰宜の計らひありがたし   育栄

 

しぐれ主宰の3句

住吉の神の造形松涼し

町衆の宮との暮しとは涼し

新顔は禰宜住吉の句座涼し

 

 

 

 

25年6月度住吉句会特選十句

空梅雨は亀棲む池の濁りにも   早川水鳥

蛇涼し拍手を聞き祝詞聞き   小井川和子

諳づる句碑万緑にありにけり   小林圭子

蛇を見る人のとぐろを巻いてをり   荻野真理子

森の音御田へ抜ける青嵐   早川水鳥

くちなはの泳ぎ着くとは消ゆること   山崎和華

蛇進む己のが全身もて余し   早川水鳥

穀霊の宿らんことを田水張る   荻野真理子

田水張る処どころに松の影   西川千鶴子

水無月の田水に宿る松の影   古川育栄

 

しぐれ主宰の3句

青嵐大楠雲を放ちけり

住吉の松不動なり青嵐

生涯の住吉暮し神の蛇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

25年5月度住吉句会特選十句

住吉は海に開けて風薫る   靖子

大空をとり込み棟咲きはじむ   照好

大いなる老木大いなる新樹   淳

卯の花の翳りたるとき香り濃し   広子

樟若葉天との対話はじまりぬ   広子

玉砂利に正しゆく歩や風薫る   恵美子

亀の子の一丁前に飛び込みぬ   和子

反橋を渡り五月の雲を追ふ   さく羅

杜若静かに人の流れあり   せつよ

若葉冷下る怖さの太鼓橋   美栄子
25年4月度住吉句会特選十句

潮のごと人引き苑は花の果   古川育栄

御田風退屈させず鯉幟   早川水鳥

妖しくも神々しくも花吹雪   山崎和華

一礼にのぼる反橋若葉風   櫻井恵美子

紫雲英田となりて御饌田にある起伏   森本恭生

なほ尽きぬ風の繰り出す落花かな   西尾澄子

駅名の右書遣り街うらら   小林圭子

苑巡り落花を繋ぐ水となる   早川水鳥

鯉の浮き落花の水を分けにけり   加藤あや

住吉の花送り出す風の神   藤田弘子

 

 

25年3月度住吉句会特選十句

角力部屋たつそれだけで宮長閑   西尾澄子

蛇穴を出て俳人に見つかりぬ   島野ちず子

蛇穴を出づ土俵入り有りたる地   山崎和華

穴を出し神蛇不動の姿あり   櫻井恵美子

穴を出しよりの風格の神の蛇   櫻井恵美子

春風や着流し力士と乗り合はす   中野美栄子

蛇穴を出で身の丈を確かむる   西尾澄子

大神の化身の蛇ぞ穴を出づ   山崎和華

御饒田いまげんげなずなにあづけたる   西川千鶴子

啓蟄の土も固めて宮土俵   酒匂律子

 

 

 

 

 

 

 

25年2月度住吉句会特選十句

御田いま日差し養ひ草青む   早川水鳥

招福猫同席の句座うららけし   山崎和華

神の田のやすらぎのとき水温む   西川千鶴子

如月や平らに賜ふ神の加護   阿部栄子

早春や住吉マップ配らるる   上手毬

一輪の紅梅神の眼差しに   小井川和子

早春の日溜る処太鼓橋   阿部栄子

日差し分けゐても白梅よりふふむ   志賀道子

二ン月の日差たまはり巫女溜り   杉林凡子

これからといふが情あり梅ふふむ   志賀道子
25年1月度住吉句会特選十句

賑やかに神に呼び掛け初戎   井川よしえ

住吉の松に翳せり戎笹   小井川和子

福笹の鎮まり句座となりにけり   島野ちず子

一句得ん福を得んとて初戎   酒匂律子

護摩焚の炎の中の御慶かな   高石泉

住吉の松しなやかに寒に入る   藤田弘子

日の差せる方の吉兆よく売れて   小井川和子

福笹のかつぐ闊歩の男ぶり   櫻井恵美子

太鼓橋光の渡る淑気かな   加藤あや

潮掛道福笹の影遠くなる   伊福幸枝

 

 

 

 

10月度住吉句会特選十句

変はりなき初穂を供ふ心かな   荻野真理子

金風や包丁式にまみえ得し   桜井恵美子

青空に堰を切ったる金鈴子   西川千鶴子

初辰の賑はひ通る稲田径   古川育栄

案山子立つ昭和の物を身に纏ひ   山崎和華

秋天を離し反橋下りてくる   西尾澄子

神の庭借りる商ひ天高し   古川育栄

神の田に遊び心の案山子立つ   西尾澄子

金鈴子雲の去来に色を変へ   西尾澄子

色変へぬ松は住吉さんの貌   酒匂律子

 

 

 

8月度特選十句

神松の秀にふれ秋の雲となる   斎藤千代美

秋涼しねんごろに師の句碑を守る   荻野真理子

句碑供物憚りながらたうがらし   中野美栄子

青通草森の育ててゐる高さ   藤田弘子

神名備に入り新涼の確かなる   酒匂律子

爽やかや御田を渡る風の音   西谷祥子

住吉の松翳たたへ秋の蝉   矢田靖子

祈ること謝すこと数多八月尽   藤田弘子

玉砂利の濃き影を踏む今朝の秋   安藝マリ子

軽鳧も田も育ちて御田秋に入る   赤松せつよ

 

 

7月度特選十句

初蝉の風に攫はれそれっきり   藤田弘子

軽鳧の子の組づ解れづ御田守る   荻野真理子

軽鳧の子の田水濁すも仕事なる   小井川和子

軽鴨の子に先達と言ふがあり   石館幸代

水動くところ軽鳧の子ゐるところ   加藤あや

田水搔き軽鳧の子の雲知らず   小井川和子

空蝉のすがる葉先のぬれてゐし   西尾澄子

軽鳧の子の動けば人の動きけり   佳山良子

青田風手植よろしく曲がりくる   小林娃穂

軽鳧の子や御饟田育み育まれ   小野田護

 

 

6月度特選十句

忌日近づく六月の句碑辺   志賀道子

拍手の涼しき音あり歌の神   安藝マリ子

この池の主とし蛇の身じろがず   奥村八千代

蛇泳ぐ水の平をそこなはず   加藤あや

水干の松翻り舞涼し   古川育栄

動かざることの威厳や神の蛇   古川育栄

水打つも住吉さんの一処   山崎和華

枝伝ふ蛇の全身見てしまふ   島野ちず子

瑞兆と神蛇に憂ひ拂ひけり   桜井恵美子

御田植や瑞穂国の末として   荻野真理子

未央誌友の俳句集(住吉句会) への3件のコメント

  1. 今村 征一 より:

    十句の中で好きな句ばかりだが中でも次の二句がすきです
    この池の主とし蛇の身じろがず   奥村八千代
    瑞兆と神蛇に憂ひ拂ひけり   桜井恵美子

  2. 今村 征一 より:

    八月の十句選で一番好きな句は
    玉砂利の濃き影を踏む今朝の秋   安藝マリ子
    朝と夕方過ごしやすくなりました。

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