未央誌友の俳句集(例会)

平成29年10月度未央例会特選十句    しぐれ選

(兼題:体育の日、添水  席題:檸檬、秋晴)

詩仙堂比叡の音にばつたんこ       美栄子

秋晴や万象翳を偽らず          つよし

手ざわりの武骨が庭の檸檬らし      あや

檸檬かむ推敲の筆しばし止め       ひろ

源流を聞かば添水の音親し        誉子

尼寺の僧都枯淡の調べかな        佳音

存門の声と聞きたりばつたんこ      ひろ

詩仙堂夜は夜の音にばつたんこ      千草

音もまた寺苑の景やばつたんこ      和子

洛中に遠き添水の音であり        真理子

 

平成29年9月度未央例会特選十句    しぐれ選

泉州の土の甘さや貝割菜    美栄子

届くことなき文つづる夜半の秋    由布子

ミントティー私だけの秋の宵     郁子

ねむれねば星にこころを夜半の秋     美祢子

露の世のもの銅鐸も木簡も      和子

三日目の土割り出でし貝割菜      水鳥

たましひの内へと入る夜半の秋       千草

露の世を生きゆく証五七五       初美

黒猫の瞳はブルー草の露      ヒロ子

路譲るとは負けることいぼむしり     宙

 

平成29年8月度未央例会特選十句    しぐれ選

売り買ひに風の音する草の市     吉上

大いなる神の一筆天の川       つよし

山猫の棲むてふ島の銀河濃し       佳音

草市のしまひ支度の一束ね        長崎佳子

不可思議なものを商ひ草の市       千恵子

地に四国三郎天に天の川         初美

草の市そこらの草も売られをり       つよし

草市に漂うてをり昭和の香          紀子

衣手に蒼き風過ぐ草の市        几城

見せばやと思ひみせばや持ちくれし       紀子

 

平成29年7月度未央例会特選十句     しぐれ選

蒲さわぎ入江は人を拒みけり       洋子

サックスのヴィオロンの着く夏館      ひろ

空調は水音風音夏館        千草

群れゐるも蒲の穂てふは孤高なる       佳音

耳朶に遠くて近し夜の雷          あや

一雷に目覚め一句の閃きぬ        初美

比叡発湖縦走のはたた神        宙

一雷に一天の堰切れにけり        良子

法灯の芯まで響き山の雷        吉上

雷霆や泰然自若座禅層       護

 

 

平成29年6月度未央例会特選十句    しぐれ選

水鉢にビルの空あり目高散る    狩屋可子

水の色目高の色とすれ違ふ     会田仁子

雨やがて音となり来し蓮浮葉    早川水鳥

提げられて句座に目高の学校来     徳岡美祢子

調律の音に拾ひしついりかな        大西誉子

やしろ跡湖底に戻りゆくついり       森美江

大いなる鉢の目高の泳ぎぶり       山崎和華

一鉢は思郷の山河目高追ふ       西尾澄子

一人なり目高と住んでをりにけり        吉永佳子

鉢といふ小さき浄土蓮浮葉        荻野真理子

 

平成29年4月度未央例会特選十句    しぐれ選

勿忘草贈りピリオド打ちし恋    山田佳音

春昼やラジオの源氏物語      小林娃穂

山城は質素堅牢百千鳥       北川栄子

巣燕に方向音痴なかりけり       酒匂律子

百千鳥水中もまた夜明けたり      松田吉上

夜は星に色を預けて勿忘草      会田仁子

分校の子等の宝や燕の巣        三木智子

片だより勿忘草をそと添ふる       吉永佳子

別人の吾ゐる鏡春の昼        山本ひろ

城址てふ夢の名残や百千鳥        北川栄子

 

 

 平成29年3月度未央例会特選十句    しぐれ選

使はずの母の離れの目貼剝ぐ     西尾澄子

苗札を挿して窺ふ土の息     山本ひろ

ふたつとはあたたかき数夫婦碗     松田吉上

苗札も達筆なりし僧の庭      櫻井恵美子

暖かや出かけなさいと山が呼ぶ     斉藤千代美

こうづけの国の多羅の芽京に買ふ     多田羅初美

暖かき一言に泣く力士かな       小林娃穂

楤の芽の一つ残つてゐる傾り     作田真代

あたたかや衛士の詰所にある番地        松田吉上

苗札に万葉仮名の並びけり         加藤あや

 

平成29年2月度未央例会特選十句    しぐれ選

パパが好きバレンタインのチョコレート   三木智子

恋の矢に射貫かれバレンタインの日     大西誉子

赦しをり君に貰ひし春の風邪      筒井恵美子

一人居の昔小町の春の風邪      大西誉子

癒えさうで癒えさうでゐて春のかぜ    佳山良子

下萌の風下萌を育てゆく        池田幸恵

黄水仙日差に唄ふラプソディー       幸田宏子

旧道は荷車の幅下萌ゆる       松田吉上

浮世絵のやうな顔して春の風邪       奥村つよし

追憶はバレンタインの日へ戻る       幸田宏子

 

平成29年1月度未央例会特選十句   しぐれ主宰選

法座より句座へ直行日脚伸ぶ      櫻井恵美子

早梅や世塵を置かぬ弥陀の庭      早川水鳥

俳諧の福おくれやす初戎       谷川原雪渓

福笹をかつぎ福相決まりけり        櫻井恵美子

まろぶこと楽しみをりぬ橇遊び        筒井恵美子

飛石に沓脱ぎ石に日脚伸ぶ       多田羅初美

あらためて馬の大きさ橇に乗る        水野芳英

さきがけるものこそ惹かれ寒の梅        志賀道子

一神事句会へつなぎ日脚伸ぶ       加藤あや

橇の音夜の底へと沈みけり          中本宙

 

平成28年12月度未央例会特選十句    選者 古賀しぐれ

ざあざあと水の塊牡蠣を採る      五十嵐至夏

思ひでを繙くクリスマスグッズ       松葉郁子

牡蠣船の高高と水吊り上ぐる       五十嵐至夏

船端に牡蠣づくしてふ宵のあり       長崎佳子

この地上テロは消えねど聖夜かな      奥村つよし

一望の海は田園牡蠣筏         多田羅紀子

老の幸せささやかな聖菓切る        作田真代

入滅のごとく一山冬ざるる        奥村つよし

諳ずる台詞ひと言聖夜劇        岩崎洋子

音絶えし時の星空クリスマス     水野芳英

 

平成28年11月度未央例会特選十句   選者古賀しぐれ

目貼して玻璃一枚の景色かな     筒井恵美子

切干や急きも慌てもせぬ余生      櫻井恵美子

奥飛騨の宿百年の隙間貼る      室田妙子

目貼して法話哀しく面白く      小玉ヒロ子

曲屋の厩舎に土の目貼かな       橋本知笑

今に知る切干の味父母の恩         小井川和子

綿虫の過りぬ蒼き影残し        松田吉上

掌に息絶えにけり雪蛍         加藤あや

漂うてゐて綿虫の行方あり        佳山良子

切干の百態さらす庭筵        酒匂律子

 

 

平成28年10月度未央例会特選十句

榠樝の実座り心地の悪さうな       指吸美羽

歪むだけ歪み榠樝の落ちにけり     会田仁子

新米を吹くへつついの大いなる     平野イクノ

ねばならぬ形とてなし榠樝の実      水野芳英

次の世は素直に育て榠樝の実      森川千鶴

青空の盛り上げてゐる運動会      岩崎洋子

運動会雲も走つてをりにけり       五十嵐至夏

炊き上げて死者に生者に今年米      佳山良子

運動会吾子の一番輝く日         森川千鶴

氏神へ運動会へ道一つ         水野芳英

 

平成28年9月度未央例会特選十句     選者 古賀しぐれ

芒原つくづく遠き詩の道       狩屋可子

少女らの胸の分けゆく花薄     加藤あや

野分晴なべて淡海となりにけり     山田佳音

近くまで明日の来てゐる夜食かな      西尾澄子

この先は風しか行けぬ芒原      徳岡美祢子

一村のうづくまりたる野分中       奥野千草

芒原帰心遠のくばかりなる        小玉ヒロ子

馬上には違ふ風吹き芒原        池田幸恵

ひそやかに芒を活けしのみなれど      五十嵐至夏

夜食とり働きぬきし昔あり          多田羅初美

 

平成28年8月度未央例会特選十句     選者 古賀しぐれ

新豆腐神代の水に生まれたる     奥村つよし

杉箸の匂へり吉野新豆腐      加藤あや

丹波路や杜氏送る夜の新豆腐     室田妙子

辞世の句口遊びつつ墓洗ふ         森本恭生

朝日まだ山かげにあり墓洗ふ       早川水鳥

水神にまづは供へる新豆腐      狩屋可子

瓜の馬遠き眼差あるごとく       西尾澄子

日本に生れし誇り新豆腐       山村千恵子

新豆腐何でもつくる山暮し       吉永佳子

一合の酒一丁の新豆腐       松田吉上

 

平成28年7月度未央例会特選十句     選者 古賀しぐれ

星の子の下りて來さうなバンガロー      佳山良子

窮屈を楽しんでゐるバンガロー      徳岡美祢子

魂に触れ來る音色鉄風鈴      小玉ヒロ子

草分けて分けて晩夏の水辺まで      石木幸野

風鈴や嬰の眠りは水の如       松田吉上

大夕立巷の音を一つにし      加藤あや

風鈴や一音一義悟りたる      奥村つよし

明珍の世の音風鈴呼び覚まし      西尾澄子

利休知る明珍風鈴の音色        奥野千草

風鈴の熱ある如く鳴りにけり       佳山良子

 

平成28年6月度未央例会特選十句    選者 古賀しぐれ

竹の皮脱ぎ月光を纏ひけり    五十嵐至夏

竹の皮脱ぐ自らの音の中     早川水鳥

竹の皮脱ぐ太陽に逢へるまで    徳岡美祢子

灯を消して網戸に星を点しけり    加藤あや

網戸より夜の色はなれゆきにけり    松田吉上

竹皮を脱ぐ青年の匂ひさせ     平野イクノ

皮脱ぎて鞍馬の竹となりにける       狩屋可子

住吉の風掛けてをり釣忍       奥野千草

釣忍俄なりけり夕ごころ     加藤あや

ハルカスに雲のつまづく五月晴      森川千鶴

 

平成28年5月度未央例会特選十句  選者 古賀しぐれ

我が心偽りのなし薔薇贈る      藤田奈千巴

少し炊き少し残りぬ麦御飯     西尾澄子

すれ違ふ人みな他人駅薄暑     山本ひろ

麦飯もいくさも知らず育ちたる       早川水鳥

落葉して常盤木ちからみなぎり来       徳岡美祢子

健やかに麦飯世代老いにけり        徳岡美祢子

糟糠の妻にも薔薇の花束を      徳永由紀子

句碑いつか墓碑とし拝し夏落葉       小井川和子

薔薇五月悲しき時は空を見る       奥村つよし

麦飯や戦時は語り継がるべし     山田佳音

 

平成28年4月度未央例会特選十句  選者 古賀しぐれ

春陰や笑むことのなき麗子像     狩屋可子

春陰や一灯分かつ十二神      平野イクノ

どの山も神座す大和巣ごもれり      大西誉子

みよし野の移ろふ春を惜しみけり       早川水鳥

子規虚子の世界に遊び春惜む        佳山良子

句作りの倦まずたゆまず豆の花        斉藤千代美

潮騒を真下に鳥の巣ごもれる         松田吉上

豆の花ぼちぼち生きて行こうかと        倉田美恵子

鳥の巣のかけねばならぬ高さかな        荻野真理子

はじめから鳥の巣傾ぎをりにけり       会田仁子

 

平成28年3月度未央例会特選十句

置き去りの家陽炎へる福島忌      大西誉子

一鉢の土筆の国の出来上る      斉藤千代美

霾や見馴れし街の昔めく       会田仁子

山頭火うしろ姿の陽炎へる       松田吉上

剪定にある鑑賞用収穫用       松葉郁子

剪定のどの位置からも津軽富士      岩崎洋子

霾や奈良に太古の仏たち       奥村つよし

剪定の腕も鋏も父ゆづり         森川千鶴

人寄せぬ福島の道陽炎へり     大西誉子

野の景となり一盆のつくづくし        奥野千草

 

成28年2月未央例会特選十句

残雪を行き名水の沸くところ   泉谷梨水

行き行けど木曽は山国残る雪   早川水鳥

鶯に教はつてゐる詩心     水上末子

浮雲や春の宴の近づきぬ    吉永佳子

誰踏まぬまま残雪となりにけり    加藤あや

山国の山の匂ひの残り雪   松田吉上

鶯や一句書き留む箸袋     雑賀みどり

頁繰るごと残雪の消えゆける    池田幸恵

山栞るごと残雪のありにけり     泉谷梨水

残雪の伊吹颪に滞る       石木幸野

 

平成28年1月未央例会特選十句

一慶事おろそかならず春を待つ    加藤あや

祝心大きく育ち春を待つ    北川栄子

寒紅や終生女忘るまじ     松葉郁子

人生も然り三寒四温かな     松葉郁子

寒紅の嘘も真も吐きにけり    西尾澄子

泉州の長者ぶりなる実万両     西尾澄子

興亡の商家の隅の実万両    大西誉子

待春の神戸近づく祈りの日    山村千恵子

寒紅の卒寿傘寿のみな達者    徳岡美祢子

生涯の一句春待つこころかな     斎藤千代美

 

平成27年12月未央例会特選十句

一門の炉辺に俳論闘はす     徳永由起子

炉を守る一人に闇の大いなる     山本ひろ

炉火足して昔話を育てをり     加藤あや

みんな居てみんな居なくて炉火を守る     泉谷梨水

残されてありし吉日古暦     西尾澄子

一巻は無垢のままなる古暦     多田羅初美

炉話へ影の大きく加はりぬ     泉谷梨水

湯ざめして一老人に戻りけり     泉谷梨水

炉話に嘘もまこともありにけり     水上未子

炉火盛ん山より大いなる話     徳岡美祢子

 

平成27年11月未央例会特選十句

酢茎桶干され上賀茂日和かな     辻花枝

杉磨く夫酢茎を漬くる妻     作田真代

冬耕の長子全うしたりけり     西尾澄子

風のごと十一月の過ぎ行かん    中村研二

冬耕の国原遠く日矢のさし     狩屋可子

冬耕の馬手労りゐて弓手     山本ひろ

冬耕を続け美田を世に遺す     多田羅初美

未だ解けぬ禅問答や散紅葉     中本宙

散紅葉時惜しむかに急ぐかに     小玉ヒロ子

紅葉散り山に納まる一寺かな      作田真代

 

 

平成27年10月未央例会特選十句

好日の今日を仕上げの温め酒   高森功一

水都早灯を流しけり秋しぐれ   奥野千草

やや寒に風の追討ちありにけり   水上未子

奈良粥に止むを待ちをり秋時雨    松葉郁子

俳論を納めてよりの温め酒    徳岡美祢子

温め酒男は愚痴をこぼさざる   奥野千草

日照雨かと秋時雨かと遣り過ごし    加藤あや

温め酒手酌最も旨かりし    森本恭生

山の日の山に傾きやや寒し    佳山良子

あなたとの距離を縮める温め酒    雑賀みどり

 

平成27年9月未央例会特選十句

一城の雨美しき白露かな    北川栄子

晴れ渡り葡萄一粒づつの翳    松田吉上

桐箱に染み込んでゐる葡萄の香    森本恭生

一房のぶだう食べをり二人して    平野イクノ

郷愁を添へて葡萄の届きたる    狩屋可子

秋草の籠より生まれ風の声    狩屋可子

くちびるに触れてくもりぬ黒葡萄    松田吉上

いつになく絵筆のびやか白露の日    泉谷梨水

難波宮跡に白露の翳りかな     山村千恵子

考への堂堂巡り夜の葡萄     小玉ヒロ子

 

平成27年8月未央例会特選十句

花火より星座に興味示す子に   櫻井恵美子

墓守の虫鬼灯の挿されあり    中本宙

もの思ひ物書く秋となりにけり    多田羅初美

湖ありて栄えし町や花火の夜     多田羅初美

青春てあつたのかしら遠花火    山本ひろ

一冊の句集と一夜ホ句の秋     森川千鶴

面影は秋の気配の中にこそ    荻野真理子

ペン擱きて風をききゐる人の秋    水上末子

秋と言ひこころに風の吹き初めし    狩屋可子

それぞれの闇を抱きて揚花火    雑賀みどり

 

平成27年7月未央例会特選十句

草いきれ都市計画の頓挫せり   山田佳音

水茎に風立ちにけり夏見舞    森川千鶴

舟遊難所に声の裏返る    三木智子

峡の空押し開きゆく舟遊    早川水鳥

一行の詩もて暑中見舞かな    加藤あや

射干や町衆気負ふ京浪速    徳岡美祢子

昏れてより水の艶めき船遊     松田吉上

夏見舞地球の裏の声とどく    山本ひろ

遊船に秘境は扉開きたる    水上末子

遊船や熊野の渓の男振り    山田佳音

 

 

平成27年6月度未央例会特選十句

美味しさを葉にも語らせ枇杷を盛る   西尾澄子

遠き日の父のにほひやパナマ帽   小玉ヒロ子

太陽へ送り出す子の夏帽子   斎藤千代美

竹落葉追ひ越してゆく竹落葉   徳岡美祢子

空よりの一筆啓上竹落葉   加藤あや

籠の枇杷まづは描けと葉を添へり   作田真代

夏帽子花鳥探してをりにけり   西尾澄子

十七の言の葉となり竹落葉   加藤あや

おいしさう食べてほしさう籠の枇杷   小玉ヒロ子

故郷の風信枇杷も熟るるころ   斎藤千代美

 

平成27年5月度未央例会特選十句

惚れ惚れとする食べつぷり初鰹   石木幸野

糶られたる眼の生きてをり初鰹   早川水鳥

初鰹江戸つ子だけのものならず   長谷川雪渓

今日生きる力を貰ひ初鰹    斎藤千代美

受洗子に風の祝福夏はじめ   森川千鶴

ラベンダー出窓に午後のハーブティー   西尾澄子

橋の名は寺の名茅花流しかな   日野たつお

舟唄を茅花流しの追ひ越せり   池田幸恵

太平洋器にのせて初鰹   中本宙

開拓の歴史遥けしラベンダー   山田佳音

 

平成27年4月度未央例会特選十句

行春や心は遠きみ吉野に   小川栄子

彼の人を勿忘草に語りをり   奥村つよし

子の相手波に任せる磯遊   雑賀みどり

磯遊夜は潮騒に熟寝かな   徳岡美祢子

磯遊忘れられたる海の空   荻野真理子

磯遊ぽつんと母の残さるる   五十嵐至夏

生物の授業となりぬ磯遊   小林娃穂

神将の風となりゆく萩若葉   早川水鳥

母の眼の届く冒険磯遊   森川千鶴

栞たる勿忘草の旅便   中本宙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成27年3月度未央例会特選十句

塔二つ暮れ畑打の戻りけり   松田吉上

逢へるかと来て逢ひ得たり春の雪   山崎和華

峡の畑打つて遠嶺に呼びかくる   松田吉上

楠公の地に脈脈と畑を打つ   狩屋可子

田楽や葷酒許さぬ坊の膳   作田真代

畑打や村を去る人戻る人   松葉郁子

泉州の潮風育ちなる蓬   狩屋可子

路地裏は風のまはりぬ牡丹雪   吉永佳子

待人の快癒蓬の萌え出づる   松葉郁子

畑打や父の匂ひの薄暮来る   松田吉上

 

平成27年2月度未央例会特選十句

末黒野の大いなる闇横たはる   雑賀みどり

闇に闇重なりてきし焼野かな   五十嵐至夏

決断の春一番に迷ひなし   吉永佳子

山茱萸の黄の濃淡を解きけり   山本ひろ

空二月ビルの凹凸際やかに   稲岡由布子

一花づつ日の行き渡り山茱萸黄に   斉藤千代美

野仏も末黒の色となりてをり   谷川原雪渓

なほ火照り立ち上りくる焼野かな   五十嵐至夏

日本は弓張る形春一番   松田吉上

青春の入り口の子に春一番   狩屋可子

 

平成27年1月度未央例会特選十句

一椀に野の息吹き込め粥柱   徳岡美祢子

悴みて言訳しどろもどろかな   斎藤千代美

全快を待ちわぶ日日や日脚伸ぶ   小林娃穂

粥柱太し二十歳となりし子に   森川千鶴

悴みて人それぞれの灯に帰る   松田吉上

寒木瓜に光膨らむ二つ三つ   奥村つよし

閉校と決まり一村悴める   池田幸惠

粥柱円も四角も崩れけり   三木智子

いつとなくいつからとなく日脚伸ぶ   佳山良子

悴みて墓石といふ父と居り   松田吉上

 

平成26年12月度未央例会特選十句

咳止むを待ちて一から又伝へ   多田羅初美

オペラ跳ね街は聖夜の静けさに   山田佳音

クリスマスカード異国の香に開く   狩屋可子

緊張の咳が咳よぶコンサート   作田真代

南座に京の底冷断ちにけり   三木智子

太陽が一つ冬田のある限り   森川千鶴

強がりを通す心の底冷ゆる   谷川原雪渓

咳一つして何事も無きやうに   奥村つよし

存在を示す空咳ありにけり   谷川原雪渓

一門の祈りはひとつ聖樹の灯   清田喜代子

 

平成26年11月度未央例会特選十句

悠久の水都の流れ街小春   高森功一

その上の空凹ませて銀杏散る   水野芳英

黄落や山門凌ぐ大銀杏    奥野千草

陵の石が物言ふ小春かな   清田喜代子

九十分待ちの拝観京時雨   松葉郁子

銀杏散り蒼天もどる大通り   佳山良子

しぐるるや珈琲を待ち人を待ち   小玉ヒロ子

銀杏散る風のつづきは風ばかり   松田吉上

やがて灯の美しくなり夕時雨   松田吉上

誰もまだ踏まぬ黄落へと一歩    徳岡美祢子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成26年10月度未央例会特選十句

傷つけて傷つけられて濁酒   五十嵐至夏

栞もて聖書閉ぢゐる夜の愁思   松田吉上

拝啓と敬具と記し愁思なほ   山本ひろ

天辺の風に置き去り鵙の贄   早川水鳥

打消して打消してなほ愁思かな   奥野千草

秋淋し二十四時間わが時間   三木智子

濁酒濁世飲み干しをりにけり   奥村つよし

放哉をときにうらやみ濁酒   松田吉上

生者とは死者を心に抱き愁思   谷川原雪渓

人間に見つけられたる鵙の贄   水上末子

 

 

 

 

 

 

平成26年9月度未央例会特選十句

吾亦紅余白育ててをりにけり  泉谷梨水

らしき翳らしき色合ひ吾亦紅  加藤あや

十六夜に読む分身の一書かな  会田仁子

十六夜の街に影ひく大欅  池田幸恵

鰯雲少年の日へ流れつく  松田吉上

影は野に忘れて来たり吾亦紅  清田喜代子

鰯雲鱗一枚づつ夕日  斎藤千代美

桃受けてやさしくなりぬ掌  会田仁子

桃を剥く暫し乙女の心もて  奥村つよし

鰯雲四球の多き草野球  雑賀みどり

 

平成26年8月度未央例会特選十句

手花火の後の闇の濃かりけり   多田羅初美

灯の増ゆる一と間ありけり盆祭   水野芳英

手花火にそつと寄り添ふ仏かな   奥村つよし

線香花火君が手の重なりて   中本宙

盂蘭盆会女おほかた遺されて   加藤あや

初盆や答へぬ妻に話しかけ   谷川原雪渓

残暑などに負けてたまるか五七五   酒匂律子

指先に線香花火の鼓動かな   奥野千草

大阪に来て鈴虫の默しけり   狩屋可子

闇の端くすぐり花火線香消ゆ   西尾澄子

 

平成26年7月度未央例会特選十句

飛石はをみなの歩幅露涼し   小井川和子

虹の消え空はヒロイン失へり   山本ひろ

焼べ足して煙楽しむ夏炉かな   日野たつお

露涼し太陽昇るまで歩く   多田羅初美

虹の橋生れ詩心恋心   小林娃穂

一舟の戻り来虹の彼方より   徳岡美祢子

天神に召さるるやうに虹の消ゆ   谷河原雪渓

風誘ふ形風蘭咲きにけり   会田仁子

色確か距離の不確か虹立てり   泉谷梨水

風蘭の夜のはじまりを濃く匂ふ   加藤あや

 

成26年6月度未央例会特選十句

闇深き蛍の国に迷ひ込む   早川水鳥

蛍に一夜の旅の物語   多田羅初美

声までも子供に還る蛍狩   小玉ヒロ子

ためらひもなく手をつなぐ蛍の夜   山本ひろ

蛍舞ふ不規則といふ規則もて   奥村つよし

蛍火の闇より現世へ戻る   雑賀みどり

夏萩のまこと佳き篭得たりけり   山崎和華

五月晴水田明りの村に着く   吉永佳子

いくつかの蛍の夜を胸に抱く   五十嵐至夏

大阪府風流郡字蛍坂   近藤六健

 

平成26年5月度未央例会特選十句

黄昏を呼び戻したる麦の秋   五十嵐至夏

飛火野は命の泉風五月   藤田奈千巴

豆の飯男心を繋ぎけり   奥野千草

薔薇一枝ばらに埋もれ選びけり   作田真代

麦秋へ被さつてくる日本海   泉谷梨水

麦秋や車窓はすでに子規の国   小井川和子

宝塚百年祭の薔薇の門   中本宙

大空へ五月の風へ胸開き   早川水鳥

うねりもて一級河川麦の秋   泉谷梨水

薔薇囲む皆一言の賛辞持ち   稲岡由布子

 

平成26年4月度未央例会特選十句

いつまでもほとりの暮色菜種梅雨   加藤あや

百本に勝る一本庭桜   徳岡美祢子

俳句とは生き方であり虚子まつる   泉谷梨水

野の色を野の香をほめぬ蓬餅   会田仁子

大勢に草餅二つとは罪な   西尾澄子

終りなき俳諧の道虚子忌かな   古閑久子

虚子の忌や闘志いだきて句座にあり   雑賀みどり

草餅を搗く街道へ香を広げ   会田仁子

蓬餅若草山のごと置かれ   会田仁子

草餅の信心深き色であり   泉谷梨水

 

 

 

平成26年3月度未央例会特選十句

水草生ひ水の惑星なる地球   狩屋可子

虚子遠し椿子遠し椿咲く   山田行恵

椿見るをんなのかほを見るごとく   小井川和子

物言はぬ椿物云ふ落ち椿   奥村つよし

つばくろのいつも急いでをりにけり   五十嵐至夏

千里来てなほ飛びたらぬつばくらめ   山本ひろ

禅林の椿の落つる音一つ   早川水鳥

都会派の田舎派のあり燕来る   雑賀みどり

水底の命の証水草生ふ   池田幸恵

この町のレトロな銀座燕来る   小野田護

 

平成26年2月度未央例会特選十句

春時雨清水祇園河原町   山田行恵

黄梅の一花飛び立つ構へかな   会田仁子

一と色の日差なだれて迎春花   五十嵐至夏

今生は善人ばかり迎春花   中野美栄子

何事も魁くは吉迎春花   櫻井恵美子

春寒くとも句心の沸沸と   小玉ヒロ子

万蕾の息吹に春のしぐれかな   狩屋可子

西行の春まだ寒き庵訪ふ   斉藤千代美

春時雨野辺の真中に会ひにけり   雑賀みどり

春時雨生きとし生ける物の音   奥野千草

 

平成26年1月度の未央例会特選十句

水仙や少年の声透きとほる   三木智子

退屈な爺の庭訪ふ寒雀   宮内渓水

逢うてみたきものの一つに雪女郎   会田仁子

七色の短冊の句座春となり   山崎和華

寒雀共に去りたる過疎の村   川上浩

水仙の真直な心活けにけり   斉藤千代美

一水の光ることより春隣   佳山良子

目も鼻も闇に預けて雪女郎   会田仁子

野水仙つぶさに見え来接岸す   多田羅初美

咲き初めし一花尊し野水仙   辻花枝

 

 

平成25年12月度の未央例会特選十句

どうしてもはみ出す葱を買ひにけり   水野芳英

葱きざむ世界遺産となる和食   三木智子

冬帝や人は何処までビルを積む   松葉郁子

たかが葱されど九条は京育ち   松葉郁子

句三昧には極月もなかりけり   志賀道子

極月の日のもう十日まだ十日   早川水鳥

散らかりしことに落着き炬燵かな   志賀道子

冬帝の光遠嶺に滞る   石木幸野

医者嫌い薬ぎらひや葱を焼く   泉谷梨水

背広にて葱を買はせてしまひけり   小井川和子

 

 

 

平成25年11月度の未央例会特選十句

怠らじ月下推敲芭蕉の忌   山田行恵

石蕗の黄はつはの黄陰にならうとも   小井川和子

凩や空を忘れしごとく歩す   磯田ひろみ

石蕗を活け推敲の座の静寂かな   指吸美羽

寂光のこぼるる雨の石蕗の花   加藤あや

禅林は石勝る庭冬めける   吉永佳子

句心はいつも初心や翁の忌   徳岡美祢子

人生は漂泊の旅翁の忌   中本宙

縁側に母の面影石蕗日和   小玉ヒロ子

親しさの近くて遠し芭蕉の忌   作田真代

 

 

 

平成25年10月度の未央例会特選十句

隠れ棲むごと鹿垣の中に棲む   多田羅初美

瓢の笛心の色に鳴りにけり   三木智子

瓢の実の音色に翳りありにけり   水上未子

魂を呼ぶごと瓢の笛を吹く   志賀道子

竹垣を以て鹿垣とせる嵯峨野   早川水鳥

それぞれの未知なる音色ひょんの笛   佳山良子

山寺の風音詰まる瓢の笛   会田仁子

鹿垣の破れかぶれとなりつづく   田畑照子

壺に挿していよいよ寂し藤袴   高森功一

瓢の笛森の不思議の音のする   池田幸恵

 

 

平成25年9月度の未央例会特選十句

颱風一過窓を拭き空を拭き   三木智子

鰯雲東京五輪まで生きたし   宮内渓水

一燭に一家集へり颱風裡   三木智子

介護する時間菜虫をとる時間   泉谷梨水

殺生は夫の任務ぞ菜虫とる   川上浩

飽食の菜虫畑となりにけり   磯田ひろみ

故郷は火山灰降り積もり颱風裡   清田喜代子

道の駅経由厨に来し菜虫   西尾澄子

菜虫とり切りといふものなかりけり   山田行恵

軍杯はまたも菜虫に上りけり   山田行恵

 

 

 

平成25年8月度の未央例会特選十句

盆の月仰いで言葉降るを待つ   佳山良子

鬼灯を鳴らし昭和を恋うてをり   櫻井恵美子

カンナ燃え燃えて真昼を暗くする   三木智子

星降つて残暑忘れてしまひけり   吉永佳子

回想の中の人々盆の月   早川水鳥

翁のなき婆の幾とせ盆の月   加藤あや

一宿の高野に仰ぐ盆の月   多田羅初美

比良残暑獣の匂ふ山路かな   室田妙子

これしきの残暑句会の盛んなり   中本宙

鬼灯や仏迎ふる灯の色に   志賀道子
平成25年7月度の未央例会特選十句

ナイターや最上段の二人連れ   川上浩

ナイターや昼のほてりの残る席   水上未子

ナイターの余韻居酒屋へと移る   小井川和子

仏桑花落ちみんなみの一日果つ   志賀道子

峠茶屋軒風鈴に風別れ   稲岡由布子

風鈴のほどよき間合ひ風夕べ   櫻井恵美子

風鈴の音に乗る遠野物語   石木幸野

ナイターや知らぬ同志が乾杯す   山崎和華

旅愁とは帰路にあるもの仏桑花   小玉ヒロ子

ナイターに明日を忘れてをりにけり   泉谷利水
平成25年6月度の未央例会特選十句

古町の路地は十薬通りなる   石木幸野

死者生者犇めく高野万緑裡   佳山良子

万緑は鳥語の国となりにけり   奥村つよし

夏暖簾風の行つたり来たりかな   奥野千草

十薬や庭を領する白き闇   五十嵐至夏

楠公の地や万緑を砦とす   狩屋可子

河流る万緑を分け国を分け   水野芳英

夏暖簾風の開閉ありにけり   多田羅初美

万緑裡六甲山は若き山   奥野千草

灯の落ちて力を抜きぬ夏暖簾   奥野千草

 

 

 

平成25年5月度の未央例会特選十句

夏めくや夜は恋の道御堂筋   奥村八千代

蚕豆を剥く莢の嵩豆の嵩   多田羅初美

揺椅子が吾が指定席庭新樹   五十嵐至夏

雨後の闇欝と迫りし新樹の香   北島慶枝

徒花も神の勘定柿の花   松葉郁子

旧居訪ふ浅間山小浅間山新樹晴   奥村八千代

吊橋のなくなってゐる新樹かな   吉永佳子

蚕豆の空気を折つて剥きにけり   日野たつお

そら豆の山河の味をしてをりぬ   水上末子

少年の思ひ出になき柿の花    日野たつお

 

 

 

 

 

平成25年4月度の未央例会特選十一句

海といふ色の魔術師桜貝   小井川和子

囀や森の時計の動き出す   奥野千草

防人の妻へ託する桜貝   吉永佳子

風船の空へ挑んでゆきにけり   五十嵐至夏

歳月の褪せることなしさくら貝   狩屋可子

波音を机上に拡げ桜貝   奥野千草

囀の好む一樹のありにけり   磯田ひろみ

路地の風さらうて行きし風船屋   小川栄子

たなごころ重ね戴く桜貝   日野たつお

畳まれて紙風船の静もれり   五十嵐至夏

春昼や人の話を遠く聞き   狩屋可子

 

 

 

平成25年3月度の未央例会特選十句

藤原の美女に見ゆる御開帳   森川千鶴

黄昏は貝母の花の辺りより   会田仁子

蛇穴を出て太陽を畏れけり   徳岡美祢子

鄙の塔都の塔も霾れり   松田吉憲

我が町の異国めきたり黄砂降る   小川栄子

開帳や暗し遠しと畏みて   吉永佳子

御開帳にはか善女となり参ず   狩屋可子

蛇穴を出て家神と祀らるる   水上末子

よく見えぬこと有難やご開帳   橋本知笑

確と見えぬことの尊し御開帳   小井川和子

 

平成25年2月度の未央例会特選十句

猫の恋闇叱りても叱りても   会田仁子

雪割草大地は日射もて迎ふ   会田仁子

雪の白雪割草の白眩し   奥野千草

咲き出てし雪割草に空遠し   会田仁子

伝へたき美き日本語紀元節   稲岡由布子

恋の猫無明の闇にはまり込む   早川水鳥

恋猫を追ひやり深き闇残る   佳山良子

嬰児を見詰めるやうに洲浜草   奥村つよし

原始より牝は太陽猫の恋   中本 宙

紀元節大和言葉をいとほしむ   狩屋可子

 

 

平成25年1月度の未央例会特選十句

君が須賀多偲びつつ読み懸想文   日野たつお

またの名をシャッター通り寒鴉   松田吉憲

永遠のテーマは恋や懸想文   荻野真理子

人日や句会三昧始まりぬ   早川水鳥

寒鴉賢者の面をしてをりぬ   森川千鶴

人日を万葉粥をもて祝す   多田羅初美

おほかたは天地讃へ懸想文   小井川和子

懸想文流るるごとき言の葉に   田畑照子

寒晴の海見る握り拳かな   小井川和子

懸想文黄泉の夫へと届けたく   島野ちず子

 

 

 

平成24年12月度の未央例会特選十句

北風に快晴の空ありにけり   奥野千草

芦隠れ波音隠れ笹子鳴く   小井川和子

じゃんけんに負けて焼藷買ひにゆく   北島慶枝

おでん屋へ流れる俳句会帰り   山崎和華

俳句てふ魔力北風ものともせず   五十嵐至夏

焼藷の焼け具合とは焦げ具合   多田羅初美

笹鳴のごと笹鳴を告げくるる   五十嵐至夏

いつまでも恋人未満おでん酒   加藤あや

焼藷の匂ひ隠せず新聞紙   佳山良子

おでん屋に国憂ひたるもの同志   奥村つよし

 

 

 

平成24年11月度の未央例会特選十句

持て余す程の大根でありにけり   直宮美智子

冬ぬくきことに救はれたる術後   多田羅初美

峡の日を力としたる帰り花   山本ひろ

初時雨てふも海路の日和あり   多田羅初美

冬暖心のままに文を書き   加藤あや

青首の大根句座に晒さるる   島野ちず子

日矢のさす辺りは故山初時雨   山本ひろ

山の日の捜しくれたる帰り花   山本ひろ

大根に触れ吾に微熱のあるごとく   清田喜代子

大根の器量に味を計りけり   桜井恵美子

 

 

平成24年十月例会特選十句

面映るほどに林檎の磨かるる   多田羅初美

馴染まざることのよろしき新走   荻野真理子

まづ酌まんそして一句を新走   小井川和子

陸奥の吾より先に着く林檎   中野美栄子

古里の山を引き寄せ採る通草   中野美栄子

秋高し山彦ひとつ山を出づ   松田吉憲

ゲレンデとなる日の近し草紅葉   奥村八千代

草紅葉いつの世からの道標   小川栄子

ましらとて取れぬ高きに通草揺れ   小玉ヒロ子

鳥の目を逃れ全き通草生る   作田真代

 

 

 

平成24年九月例会特選十句

冬瓜の重さ何物とも違ふ   小井川和子

鉦叩単音綴る夜なりけり   荻野真理子

鉦叩余白の多き日記閉づ   稲岡由布子

鉦叩心通ふ夜乱るる夜   北島慶枝

狐雨通り厄日の終りけり   多田羅初美

冬瓜の悟りきったる座りかな   奥村つよし

心音にかぶさってくる鉦叩   竹田富美子

大琵琶の沖青すぎる厄日かな   室田妙子

南朝のみささぎを守る鉦叩   早川水鳥

鉦叩彼の世の人を呼ぶやうに   三木智子

 

 

平成24年八月例会特選十句

初秋の故郷の山に対しけり   田畑照子

子規恋ひの百句目指さん鶏頭花   小井川和子

正面も裏側もなし鶏頭花   山本ひろ

鶏頭の庭祖父母ゐて父母のゐて   五十嵐至夏

一村に子の声走り鶏頭花   加藤あや

鶏頭の日を吸ひつくしゐて昏し   早川水鳥

鶏頭の遠くに咲いて目に深し   田畑照子

掃苔や声なき声を聞いてをり   加藤あや

鼠花火走る闇連れ視線連れ   山本ひろ

手花火の光とどかぬ顔一つ   松田吉憲

 

 

平成24年七月例会特選十句

夕明りそのまま青田月夜かな  松田吉憲

最澄の山の水引く青田かな   室田妙子

日本の大地を正し青田なる   荻野真理子

平成の女は元気生ビール   高畑美江子

青田風湖の匂ひをなつかしむ   竹田富美子

しかと水掴み青田となりにけり   荻野真理子

白鷺の点となりゆくまで青田   狩屋可子

昨夜ベガを仰ぎたる宿露涼し   吉永佳子

ビヤガーデンやうやく星の生まれけり   佳山良子

含羞草指の魔法にかかりけり   会田仁子

 

平成24年六月例会特選十句

時鳥鳴くだけ鳴きて風残る  小井川和子

村の灯の一つは喪の灯時鳥  松田吉憲

鳴き次ぎて夜を濃きものに時鳥  松田吉憲

影もたぬ影でありけり苔の花  三木智子

時鳥終着駅は山の中  吉永佳子

あえかとはこれにて候苔の花  桜井恵美子

梅雨の窓一つ一つの昼灯  森川千鶴

時鳥聞くも聞かぬも旅名残  稲岡由布子

切なかりけり時鳥啼きやまず  五十嵐至夏

人の数だけ教室の梅雨湿り  三木智子

平成24年五月例会特選十句

不器用な袋掛なり農学部   作田真代

航跡の消えて卯浪となりにけり   松田吉憲

蕗一把摘み来て粗粗しき厨   五十嵐至夏

蕗を煮てどっぷり蕗の香にひたる   竹田富美子

卯浪分け島々を分け瀬戸の船   井川よしえ

袋掛脚立の影の長くなり   荻野真理子

袋掛して一島の膨らます   徳岡美祢子

一つづつ語りかけつつ袋掛   桜井恵美子

青空をむんずと掴み袋掛   奥村つよし

紫は忘れじの色紫蘭咲く   竹田富美子

平成24年四月例会特選十句

隠沼へ竹秋の風沈みゆく  澤田登美子

耳いつも通りに起きてゐて朝寝  徳岡美祢子

風離すとき掴むとき糸桜  加藤あや

朝寝して部屋のよそよそしくありぬ  小井川和子

極楽を垣間見てゐる朝寝かな  山本ひろ

竹の秋法話眠たしありがたし  山崎和華

白白と昼の重さとなる桜  会田仁子

爛漫の花に正面なかりけり  水上末子

朝寝して脳まっさらとなりにけり  山本ひろ

皆出自問ひたる句座の桜かな  小野田護

平成24年三月例会特選十句

蜷の道一方通行なりしかな  森本綾女

人の世もゆるりと歩め蜷の道  荻野真理子

蜷の川水を濁さず泥動く  徳岡美祢子

奔放の風に黄を撒く花ミモザ  水上末子

海の色残して目刺干し上る  直宮美智子

里山の風のでこぼこ茎立ちぬ  稲岡由布子

三歳の靴が崩せる蜷の道  山本ひろ

壺に挿すミモザの花の烟る距離  小玉ヒロ子

目刺美し一匹も一連も  山崎和華

蜷の道袋小路に入りけり  山本ひろ

明石春詠 ホトトギス主催  特選の中に未央誌友三人入選

片隅に雛置き釘煮商へり  加藤あや

惜しげなくいかなご零し糶始む  雑賀みどり

一籠に乗るいかなごの光かな  田村文代

平成24年二月例会特選十句

春寒の湖のひかりに兆すもの  徳岡美祢子

嫉妬一つ生れバレンタインの日  室田妙子

薄氷に押されうすらひ動き出す  佳山良子

紫衣のまま俳諧の座に蕗の薹  松葉郁子

薄氷の日の濡色となりにけり  磯田ひろみ

一行詩贈らむバレンタインの日  斎藤千代美

賢者愚者ときめきバレンタインの日  徳永由紀子

春寒し句の生涯を偲びつつ(中村芳子先生追悼)  会田仁子

薄氷日の一線の走りをり  会田仁子

妻でなく母でなくバレンタインの日  松田吉憲

 

 

平成24年一月例会特選十句

一笹に福結ふ順のありにけり  多田羅初美

吉兆を担ぎ男を上げにけり   小井川和子

句座みなに福を領かたん戎笹  小野田護

風花の暮れ星空の生れけり   水上末子

戎笹句座に寄り道しておりぬ   早川水鳥

松の内暮しのこゑの改まる    徳岡美祢子

風花は視界を奪ふものならず  多田羅初美

風花の舞ふ消ゆる為消ゆる為   五十嵐至夏

神仏に親しきことも松の内   作田真代

風見えてゐて風花を見失ふ   奥野千草

 

 

未央誌友の俳句集(例会) への10件のコメント

  1. tatutahime より:

    ちゃっかり、桃太郎の大阪弁の句も入ってますね。

    村里はがらんどうなる神無月ですよ。

    やはり例会の句みないい句ですね。

  2. 今村 征一 より:

    未央ならではの句を鑑賞させてもらった。
    一番好きな句は
    吉兆を担ぎ男を上げにけり   小井川和子

  3. 今村 征一 より:

    二月例会の十句鑑賞させて頂きました。特に下記の三句が好きな句です。
    一行詩贈らむバレンタインの日  斎藤千代美
    春寒し句の生涯を偲びつつ(中村芳子先生追悼)  会田仁子
    薄氷に押されうすらひ動き出す  佳山良子

  4. 今村 征一 より:

    平成24年3月例会特選10句で一番好きなのは下記の句です
    人の世もゆるりと歩め蜷の道  荻野真理子

  5. 今村 征一 より:

    片隅に雛置き釘煮商へり  加藤あや
    加藤あや様大会賞お目でとう御座います。

  6. 今村 征一 より:

    中でも一番好きな句は
    白白と昼の重さとなる桜  会田仁子
    です。8日の鎌倉の虚子忌では未央の方も大勢いらっしゃったようです。

  7. 今村 征一 より:

    五月の例会の中で一番好きな句は
    青空をむんずと掴み袋掛   奥村つよし
    です。
    いろいろ勉強させられる可句ばかりでした

  8. 今村 征一 より:

    七月特選十句のうち好きな句は次の二句
    夕明りそのまま青田月夜かな  松田吉憲
    含羞草指の魔法にかかりけり   会田仁子
    皆さんお上手ですね

  9. 今村 征一 より:

    24年10月
    ゲレンデとなる日の近し草紅葉   奥村八千代
    情景のはつきり判る句です。

  10. 浦島太郎 より:

    八千代は私の叔母です 90歳です

    浦島太郎

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