古賀しぐれの評
「自らを慰め唯励む」。この作者もそのお一人ではないかと思われる。長い俳句のキャリアの間にはいろいろな困難もあったと思われるが、黙々と俳句に向き合ってこられた。そして掲句。修二会には「お水送り」という行がある。若狭で汲み上げられた香水を奈良へと送る神事。送られた水は若狭井へ届くと伝わる。香水は十一面観音にお供えされる。目では確かめられない伝承の水を一句に上手く仕立て上げた。《水朧》の《朧》が洵に良く効いている。若狭から奈良へ、過去から現代へと走る清らかな香水の音まで聞こえてきそう。幻のお水送りを一句にまとめ、さもありなんと思わせる。これも作者のひた向きな修練の賜であろう。
古賀しぐれの評
この句も二月堂の修二会。三月とは言えまだまだ寒い日が続く中の参籠。昼間訪れると参籠の僧の束の間の休息を垣間見ることが出来る。榾木を寄せての焚火。参籠の間はずっと紙子という厚紙に柿渋を引いた衣服を纏っている。しわしわで少し破れていたりもする。その寒さを凌ぐための焚火。《庭火かき立て》がいかにも参籠の僧の素朴な起居を彷彿とさせる。五句ともに修二会の客観写生が見事。
古賀しぐれの評
掲句も奈良公園の句。飛火野辺りであろうか。飛火野の何もない大きな空間。陽炎が立ち上っている。その遠望に鹿が群れている。陽炎が動いたなと思ったら、うずくまっていた鹿が立ち上がったのだ。《陽炎をひとゆすり》の措辞が巧み。陽炎という実態のないものを鹿の起居によって確かめたという、虚と実の描写が自然体である。
さくらんぼからのお知らせ
高校生の方もどしどし投稿下さい
未央誌のさくらんぼの用紙ご使用下さい
福本めぐみの評
映画のワンシーンのようです。大地をひびかせるような大砲の音を合図にして鴨がはばたいたのです。実際は少しちがう景色かもしれません。耳でとらえた音に空高く飛んでいる鴨の群れを組み合わせることで自分らしい映像のようなな景色を立ち上がらせることができました。
福本めぐみの評
この大きなくすの木は何歳なのでしょう。その木にたくさんの鳥たちがやって来てさえずっています。はやく春になってと風や日ざしに呼びかけているようです。いえ、もう、春ですよ!と私たちに呼びかけているのかもしれません。
福本めぐみの評
だれもいないすべりだいのほうから、かぜがふいてきました。ふわっとあたたかいかぜをからだにうけて、はるかぜさんもすべりだいをたのしんでいるんだなとかんじました。
さくらんぼの句
さくらんぼの句 福本めぐみの評
雪落ちて見送るように木々が揺れ 高一 北村 壮
|
落柿舎
Copyright(c)2016biohAllRightsReserved.