六月号(H28)

未央の俳句

誌友の雑詠    古賀しぐれ選

 

     若狭井へひたすら走る水朧       安部州子


古賀しぐれの評

     「自らを慰め唯励む」。この作者もそのお一人ではないかと思われる。長い俳句のキャリアの間にはいろいろな困難もあったと思われるが、黙々と俳句に向き合ってこられた。そして掲句。修二会には「お水送り」という行がある。若狭で汲み上げられた香水を奈良へと送る神事。送られた水は若狭井へ届くと伝わる。香水は十一面観音にお供えされる。目では確かめられない伝承の水を一句に上手く仕立て上げた。《水朧》の《朧》が洵に良く効いている。若狭から奈良へ、過去から現代へと走る清らかな香水の音まで聞こえてきそう。幻のお水送りを一句にまとめ、さもありなんと思わせる。これも作者のひた向きな修練の賜であろう。









   参籠の庭火かき立て修二会衆       加藤あや

 

古賀しぐれの評

   この句も二月堂の修二会。三月とは言えまだまだ寒い日が続く中の参籠。昼間訪れると参籠の僧の束の間の休息を垣間見ることが出来る。榾木を寄せての焚火。参籠の間はずっと紙子という厚紙に柿渋を引いた衣服を纏っている。しわしわで少し破れていたりもする。その寒さを凌ぐための焚火。《庭火かき立て》がいかにも参籠の僧の素朴な起居を彷彿とさせる。五句ともに修二会の客観写生が見事。










    陽炎をひとゆすりして鹿立てり       松田吉上

 

古賀しぐれの評

    掲句も奈良公園の句。飛火野辺りであろうか。飛火野の何もない大きな空間。陽炎が立ち上っている。その遠望に鹿が群れている。陽炎が動いたなと思ったら、うずくまっていた鹿が立ち上がったのだ。《陽炎をひとゆすり》の措辞が巧み。陽炎という実態のないものを鹿の起居によって確かめたという、虚と実の描写が自然体である。





さくらんぼ(高校生以下の作品)   福本めぐみの評

 

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 高校生の方もどしどし投稿下さい
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 演習の砲のひびきに鴨帰る   小五  小多凱士

 



 

福本めぐみの評

    映画のワンシーンのようです。大地をひびかせるような大砲の音を合図にして鴨がはばたいたのです。実際は少しちがう景色かもしれません。耳でとらえた音に空高く飛んでいる鴨の群れを組み合わせることで自分らしい映像のようなな景色を立ち上がらせることができました。








 

 
大くすに春よぶ鳥のにぎやかに   小五  宮成春来

福本めぐみの評

    
   この大きなくすの木は何歳なのでしょう。その木にたくさんの鳥たちがやって来てさえずっています。はやく春になってと風や日ざしに呼びかけているようです。いえ、もう、春ですよ!と私たちに呼びかけているのかもしれません。



 




はるのかぜすべってくるよすべりだい   年長  難波孝太朗

 

福本めぐみの評

    だれもいないすべりだいのほうから、かぜがふいてきました。ふわっとあたたかいかぜをからだにうけて、はるかぜさんもすべりだいをたのしんでいるんだなとかんじました。


 

 

さくらんぼの句

  

        さくらんぼの句   福本めぐみの評

 

 

雪落ちて見送るように木々が揺れ  高一  北村 壮

 雪がこずえからすべりおちました。振り返ると木々のこずえがゆれていました。まるで、手を振るわかれのようです。木々に見送られているように感じた作者は受験か、なにか、人生の大きな一歩を踏み出す時だったのではないでしょうか。
作者の静かな心のたかぶりを感じます。

 


入学式凛々しい顔の兄を見る 中三  笠間優里

高校の入学式なのでしょう。受験を乗り切って新しい学校の出発の日に胸を張る兄の顔をまぶしく見つめています。それまでの兄の頑張りを知っているからこそ、今日の顔を凛々しいと感じて応援しているのです。

 


卒業をしても母校で遊んでる  中一  岸 空大

小学校で過ごす六年間はとても長く親しみ深いものです。校庭のすみずみまで知りつくしています。卒業して「母校」と呼ぶ今、さらに愛着が深まって仲間と集まっているのです。母のように暖かく迎えてくれる学校なのです。「母校」いい言葉です。

 


校庭の休みの花をひとりじめ  中一  本城由比奈

春休みの一日、ふと立ち寄った校庭のすみに静かに咲き満ちる桜。誰もいない、私ひとりのために咲いてくれているような桜。花を見上げて、花の下に立ち尽くす少女をやわらかな光が包んでいるような景色を想像して、ぜいたくな、満ち足りたいい気分になりました。

 


演習の砲のひびきに鴨帰る  小五  小多凱士

映画のワンシーンのようです。大地をひびかせるような大砲の音を合図にして鴨がはばたいたのです。実際は少しちがう景色かもしれません。耳でとらえた音に空高く飛んでいる鴨の群れを組み合わせることで自分らしい映像のようなな景色を立ち上がらせることができました。

 


放課後によりみちして見るつばめの巣  小五  山村真市

「つばめが巣を作っているよ」「今年もやって来たんだね」「行ってみよ」そんな、やりとりがすぐに想像できます。海をこえて長い旅の終わりをここに決めて、いそいそと巣作りをするつばめたちに、あいさつをするための「よりみち」です。

 


大くすに春よぶ鳥のにぎやかに  小五  宮成春来

この大きなくすの木は何歳なのでしょう。その木にたくさんの鳥たちがやって来てさえずっています。はやく春になってと風や日ざしに呼びかけているようです。いえ、もう、春ですよ!と私たちに呼びかけているのかもしれません。

 


いっせいにぐんぐんのびるつくしたち  小五  狩屋佑菜

ようやく、頭を出したつくしはあっという間にぐんぐんのびます。もう少し大きくなってから摘もうと思っていたら、もう、伸びすぎていたりします。つくしのようにすくすくと、どんどん春はすすんでいきます。 

 


つかれたなお花見おにぎりああうまい  小四  西川真采

花を見て沢山歩いたのでしょうか。沢山の人出に疲れたのでしょうか。花疲れという言葉があるように、なんとなく疲れを感じるのがお花見ですが、おいしいおにぎりをほうばったら、疲れなんかすぐに吹きとびそうです。

 


大そうじどんどんきれいいい気持ち  小四  山村侑己

去年の大そうじなのでしょうか。でも、春休みにするそうじと読んだほうが楽しいです。進級を前にいらなくなるものをどんどん捨てて行くのです。机のまわりもきれいになって、やる気も上がります!

 


ごはんにねいかなごのせるとおいしいよ  小三  山村 隼士

ほんとうに!おべんとうのごはんにいかなごがのっているとうれしくなる!私ですが、それが、あったかごはんなら、いうことありませんね。

 


どうぶつえんカピバラにあうはる休み  小二  難波美帆

ほのぼのとしたカピパラの表情や動きがかわいいですね。すべての生き物が動きだすように感じられる春です。動物園は春がいいです。赤ちゃんがいろいろな所で生まれたニュースもたくさん聞こえてきます。

 


スーパーでいかなごちょっとつまみぐい  小二  山村竜暉


いかなごの「ししょく」があるというのは神戸ならではですね。「いかなご好き」というのも神戸っ子というかんじです。いかなごをみたら、つまみぐいしたくなるのです。

 


おねえちゃんもぼくも一年しんにゅう生  小一  西川嘉人

おねえちゃんはちゅうがく一年生、ぼくはしょうがっこうの一年生。ふたりともしんにゅう生、どきどきするきもちはおんなじです。おねえちゃんとおなじきもちになれることは、うれしいきもちです。

 


はるのかぜすべってくるよすべりだい  年長  難波孝太朗

だれもいないすべりだいのほうから、かぜがふいてきました。ふわっとあたたかいかぜをからだにうけて、はるかぜさんもすべりだいをたのしんでいるんだなとかんじました。

 


ほいくえんいくみちがすきつくしある  年中  岸 しゅうた

ほいくえんへいくみちのつくしにきがつくしゅうたくんが、いいなあとおもいます。はる、なつ、あき、ふゆ。いろんなものにきづく、めをもっているのです。また、いろいろなものをみつけておしえてくださいね。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                              落柿舎

 

 

 


 

       

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