十二月号(H30)

未央の俳句

誌友の雑詠    古賀しぐれ選

 

     帝陵は南北長し鰯雲        武田 茂

 

    

 

古賀しぐれの評

  

  帝陵とはご存知の仁徳天皇陵のこと。この度世界遺産への日本からの推薦が決まり、地元では大いに盛り上がっている。目の当たりにすると、正に大いなる御陵で全景は窺えない。掲句は帝陵を俯瞰しているような詠いぶり。「南北長し」と具体的に詠ったところがポイント。前方後円墳が南北に伸びている景色がすーっと浮かび上がる。「鰯雲」の季題がこの大いなる景色を語るに相応しい。どこまでも続く鰯雲の空。その下に鎮座する仁徳天皇陵。悠久の古墳時
代へと誘われてゆくような気分にもなってくる。多くを語らず奥深い景色を想像させる秀逸の一句となった。来年度の世界遺産決定が待ち遠しく思われる。

 

 

 




    子規館へ道まつしぐら銀杏の実          須谷友美子

 

 

古賀しぐれの評

  

   九月に伝統俳句全国大会があったので、松山へと訪れた。松山は流石に俳句の町。其処此処に子規の足跡が認められる。そして子規記念博物館という素晴しい館が建てられている。勿論、吟行の道が一直線に子規記念博物館に通じているという直接的な意味もあるであろうが、掲句には作者の俳句への道が子規に通じているという思いも重なっていると思われる。そして季題の「銀杏の実」。金色に輝く銀杏の実と句心が重なり作者の俳句への弾み心が感じられる。


 

 






  籠城のごと門鎖しぬ虫の声         吉永佳子

 

 

古賀しぐれの評 

   九月の台風は近畿各地に大変な被害をもたらした。その後、各地の吟行地を訪れたが、風害は著しいものであった。掲句は岸和田城吟行の折の句。岸和田城もご多分に漏れず、被害が相当あり、天守閣への登城は閉鎖されていた。そのことを詠んだ句は沢山あったが、この句は一歩踏み入った句。まるで戦国の世の籠城のごとき閉門。作者独特の詠みぶりが面白い。虫の声がその雰囲気を醸し出している。

 


 

 

 



さくらんぼ(高校生以下の作品)   福本めぐみの評

 

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秋の海時々光る波頭           中一 山村真市

 

 


 

福本めぐみの評

   風も無く晴れ渡った秋の海です。どこまでも続く青い空と青い海。時々光を返す波頭が明るくてとても美しく、静かな景色を想像させてくれます。「時々光る波頭」という表現に写生の力を感じます。

 


 






 

 
鈴虫の鳴く声なぜかさみしけり        小五 倉田 晄

 

福本めぐみの評

   鈴虫の声になんとなくさみしさを感じている小学五年生は詩人です。なんとなく、なぜかというところを深く考えたり感じたりして晄さんの世界がひろがるといいです。

 



 


おいかけてまたおいかけてとんぼとる         小二 難波孝太朗

 

 

福本めぐみの評

  「おいかけてまたおいかけて」という言い方にとんぼの飛び方が見えるようです。ついっととんで、またひとところにとどまって、おいかけるとまたついっととんでまたとどまって、とんぼとの追いかけっこはきりがありません。

 


 

 

 

 

さくらんぼの句

  

        さくらんぼの句   福本めぐみの評

 

 

颱風よ来るなら月曜テストの日      中三 本城由比奈

 テスト期間や範囲が先生から告げられると、少し心に重荷ができます。計画的に勉強する人は少ないのではないでしょうか。計画はたてますけどね。今日こそは今日こそはと思っているうちに日が過ぎてしまいます。そんな時に颱風の予報。くるなら月曜にして、と期日指定してテストが先に延びてくれたらいいなんて思っています。願いは叶えられたのかな?

 

美しい姿を月は出し惜しみ         中一 狩屋佑菜

雲の向こうに月のある気配はしています。雲に隠れていても十分に明るく美しいことが想像できます。雲が動いてもう出るか、もう出るかと待っていますが、なかなか姿を現してくれません。早く会いたいのにと恋人を待っているような気持ちを月に感じているところがおもしろいです。

 

秋の海時々光る波頭           中一 山村真市

風も無く晴れ渡った秋の海です。どこまでも続く青い空と青い海。時々光を返す波頭が明るくてとても美しく、静かな景色を想像させてくれます。「時々光る波頭」という表現に写生の力を感じます。

 

試合前あたまの上に赤とんぼ        小六 山村侑己

赤とんぼは励ましに来てくれているのか、邪魔をしに来たのか。想像したら、ふふっと楽しくなりました。試合前の緊張が少しほぐれて肩の力を抜いていい試合が出来たのではないでしょうか。本当にあった事というのは面白いです。

 

夕食はとうもろこしのご飯かな        小五 山村隼士

とうもろこしの入ったご飯なのか、とうもろこしをご飯がわりに食べたのか少し分かりにくかったのですが、ご飯を食べずにお腹いっぱい食べたいくらいおいしいとうもろこしだったのだなあと思いました。

 

鈴虫の鳴く声なぜかさみしけり        小五 倉田 晄

鈴虫の声になんとなくさみしさを感じている小学五年生は詩人です。なんとなく、なぜかというところを深く考えたり感じたりして晄さんの世界がひろがるといいです。

 

ぶどう園ぶどうのにおいしているよ        小四 難波美帆

ぶどう園だからぶどうのにおいがしているのはあたり前かも知れせん。でも、ぶどうのにおいってこんなにおいだ?と言えるものがないように思います。そんなあわい、においを感じとっているところが、いいなあと思います。

 

かねたたたきふしぎな鳴き声するんだな       小四 山村竜暉

いつでも、どこでも、どんな時にも秋になると鳴いているかねたたきですが、あの声をかねたたきだと知る人は、なかなかいないのではないでしょうか。え、あれ虫の声だったの?ていう感じです。あれでも、ちゃんと羽をこすりあわせて鳴いているのですね。

 

秋の虫まどの外から呼んでいる           小三 三原咲月

秋になるとどこからともなく、さまざまな虫がやってきて窓の外で鳴きます。まるで、呼びかけてくれているようです。

 

なしたべるおくってくれたおばあちゃん        小三 狩屋とうあ

なしをたべながら、なしのしるをしたたらせながら、おいしい、おいしいといいながら、おくってくれたのはおばあちゃんなんだよ、とかんしゃしているとうあくん。おばあちゃんは、みんなのおいしいかおがだいすきなのでしょうね。

 

草むらにぴょんぴょんとんでるひしばった         小二 倉田智浩

ひしばったというのは羽が小さくて、飛ばないかわりに、うしろ足がおおきくて、ぴょんぴょんじゃんぷすることが得意なのですね。この句でおしえられました。はらっぱでものすごくいっぱい跳んでいるのはひしばっただったのです。

 

おいかけてまたおいかけてとんぼとる         小二 難波孝太朗

「おいかけてまたおいかけて」という言い方にとんぼの飛び方が見えるようです。ついっととんで、またひとところにとどまって、おいかけるとまたついっととんでまたとどまって、とんぼとの追いかけっこはきりがありません。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                             


 

       

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