どんぐり句会

令和3年12月度  どんぐり句会 特選10句

木守柿のみの目立ちて里の道         よしのしづか

鴨どちの禊の水音神の池           奥村つよし

湯婆を抱きサッチモに夜を明かす       田渕さく羅

干支の寅はやもお出ましお納句座       高石泉

寂庵の山茶花ひとひらづつ散りぬ       山根桜香

もう一度見に山茶花の回り道         山下夢

納句座五年の月日閉ぢにけり         佳山良子

高々とキャンドル灯し納句座         高石泉

ビオロンの音色澄みをり冬の星        よしのしづか

大切な日日を生ききて納句座         田渕さく羅

令和3年11月度  どんぐり句会 特選10句

芋頭翁のやうな面構             よしのしづか

初時雨向かうの山は日差しをり        山下夢

けふ一と日感謝を記し一葉忌         田渕さく羅

大和路の低き家並吊し柿           佳山良子

無事告げるやう吊し柿届きけり        中本みち代

梟の月食の夜を啼きにけり          高石泉

み吉野の旅路にたまふ柚湯かな        田渕さく羅

プロフェショナルに生き抜き月冴ゆる     墨美幸

十人の句会楽しや一葉忌           高石泉

古希の旅神の集へる出雲へと         綛田寿美子

選者  古賀しぐれ の2句
ひねもすの日向は淡海吊し柿
青松の綺羅初時雨上りけり

令和3年10月度  どんぐり句会 特選10句

鳥どちも笙仕る七五三            奥村つよし

白秋やベートーベンは胸に生き        墨美幸

木の実独楽止まりて元のどんぐりに      佳山良子

思ひ出も共に回りぬ木の実独楽        佳山良子

秋深し机上に文と老眼鏡           よしのしづか

末枯や終の住処をいかにせん         前田久恵

山深き谷の夕暮れ鵙の声           山下夢

浮寝鴨守つてをりぬ神の水          奥村つよし

一枚の赤に見惚るる初紅葉          前田久恵

あいりんの木賃宿の灯末枯るる        山根桜香

選者 古賀しぐれの2句
正倉院森は古代の小鳥籠
千年の礎石もろとも末枯るる

令和3年9月度  どんぐり句会 特選10句

秋草や屋号入りたる桶二つ          佳山良子

山風に秋七草のビブラート          よしのしづか

車窓一望秀麗の山の色            中本みち代

星月夜独りの影を連れ帰る          田口照美

子を迎へくれふるさとは草の秋        墨美幸

野に愛づる秋草の名も知らずして       山下夢

秋の蝉街に無音の救急車           山根桜香

本の世と現を往き来して夜長         前田久恵

風に揺れをりぬ葉先の赤とんぼ        高石泉

朝ごとに秋草を摘み仏守る          田渕さく羅

選者  古賀しぐれ の2句
コスモスの風コスモスの径塞ぐ
句敵といふや爽やかな仲間かな

令和3年7月度  どんぐり句会 特選10句

エレベーター香水の香の乗り込みし       佳山良子

腰抜けの風となりけり古団扇          奥村つよし

無地団扇吾の一句を揮毫せり          中本みち代

香水一滴よそ行きの顔となる          綛田寿美子

香水の香りの混り合ふ車輌           山下夢

花火てふ篆書の文字の舞ふ団扇         墨美幸

森羅万象の俳人悼む夏             山根桜香

崩れなき一皿夫へ冷奴             山根桜香

一面の向日葵のみな吾を向く          高石 泉

香水や一人の刻の豊かなる           田渕さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
自動ドアーどつと入り来る蝉時雨
風のひとひら水のひとひら蓮名残

令和3年6月度  どんぐり句会 特選10句

蟇鳴いていよよ眠たき祝詞かな         奥村つよし

明易きことも味方ににウオーキング       佳山良子

女郎蜘蛛人の気配に隠れけり          よしのしづか

吾の書きし和暦剥るる梅酒瓶          中本みち代

木戸軋む音に気遣ひ明易し           綛田寿美子

明易し夢の名残を辿りをり           山下夢

雨粒に紛れてをりぬ子でで虫          墨美幸

アロハ着て秘書官西成を闊歩          山根桜香

モットーは早寝早起き明易し          高石泉

淡淡と君消えゆきし明易し           田渕さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
楠落葉樹齢神代へ遡る
くちなしの花芳香の雨雫

令和3年5月度  どんぐり句会 特選10句

散歩道ポピーの風の脈打てり          よしのしづか

若葉して一樹の個性見えはじむ         佳山良子

銭湯の記憶ありけり昭和の日          山根桜香

若葉雨子の傘の上母の傘            綛田寿美子

困憊の身にしみじみと新茶かな         墨美幸

谷若葉下り長き初瀬道             森本恭生

青葉闇日本狼終焉地              森本恭生

鴨足草拳り飛び立つ構へかな          高石泉

手習ひの詩歌の湿り若葉風           田渕さく羅

汝に話したきこと数多アマリリス        田渕さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
鳥声はボーイソプラノ新樹晴
楠落葉樹齢は八百年の嵩

令和3年4月度  どんぐり句会 特選10句

猫ぎらひ子猫に見抜かれてをりし       佳山良子

三密となり三匹の子猫かな          佳山良子

名前はまだ無い我輩は子猫なる        奥村つよし

朝寝して二度寝の夢に雨の音         広瀬佳子

枷ありてこその朝寝でありにけり       森本恭生

早発ちのバスの中にてまた朝寝        綛田寿美子

ジェンダーの履歴書にじむ夜の朧       山根桜香

朝寝して世界一周夢旅行           山下夢路

空が好き色のマジシャンしゃぼん玉      高石泉

藤浪の光り大楠翳りけり           田渕さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
天辺は紫雲白雲桐の花
薔薇溢れしめ深窓に住むは誰

令和3年3月度  どんぐり句会 特選10句

無人駅無人交番里のどか            佳山良子

水族館長閑によきによきちんあなご       森本恭生

今日嬉し明日も愉し桜まじ           田口照美

長閑なりひと刺づつに縫ふキルト        広瀬佳子

たんぽぽとしゃべりつくして日の暮れぬ     井川よしえ

長閑なり路面電車は尻を振り          奥村つよし

繋がりを生くる糧とし春の空          墨美幸

静謐の待合精輝ひひなの間           山根桜花

無機質な三角点や山笑ふ            山根桜花

花辛夷明り二階の句座明り           田渕さく羅

選者  古賀しぐれ の2句
雨ピアニシモ鶯フォルテシモ
とびきりの笑顔泣顔卒園す

令和3年2月度  どんぐり句会 特選10句

流鶯の導きくるる天守閣            山根桜香

吾を忘れ時を忘れて初音聴く          奥村つよし

蕗味噌の一献加へ里便り            よしのしづか

一山の黙解き不意をつく初音          佳山良子

医療従事者へ鶯の声届け            中本みち代

春愁や父母の写真の若きまま          金 孝江

コロナ禍の無言の会釈暖かし          田口照美

全身に大地の鼓動青き踏む           高石泉

病得し悲しみ微かなる初音           墨 美幸

覚悟せる手術の延びて春動く          墨 美幸

淋しさのつれづれ雛灯しおく          田渕さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
右耳に藪のほころびより初音
蒼天の誘ひ出したる初蝶黄

令和3年1月度  どんぐり句会 特選10句

水かめの餅に届かぬ箸の先            佳山良子

朝影の厨に水餅の鎮座              広瀬佳子

紫に緑に見ゆる寒鴉               奥村つよし

住吉傘つけて福笹決まりけり           高石泉

日脚伸ぶ街の風音オノマトペ           山根桜香

筆始姉妹の持ち味発揮せむ            墨美幸

告白は成人の日のラブレター           墨美幸

力なき我に水餅力餅               田口照美

丑年の宮に寒久の口漱ぐ             田淵さく羅

選者 古賀しぐれ の2句
砂の波一枚づつに日脚伸ぶ
茜さす淡海むらさき春隣    

令和2年12月度  どんぐり句会 特選10句

梵鐘の余韻まだあり年の行く           佳山良子

静寂の二礼二拍手息白し             奥村つよし

古家をつき抜けにけり大嚏            よしのしづか

胸の内赤赤と燃え息白し             森本恭生

暮れ惜しむ銀杏黄葉の光かな           広瀬佳子

フェイスガードとり存分の息白し         中本みち

恐るべしこの厄年の柚子湯かな          墨美幸

紫が終の色なり菊枯るる             高石泉

退院の感謝の空に冬の虹             田口照美

息白し朝日に願ふけふの幸            田淵さく羅

令和2年11月度  どんぐり句会 特選10句

句集成りほつと一息冬ぬくし           綛田寿美子

清泉の湧きて宮守る神の留守           墨美幸

神の留守宮に巫女をり恵比寿をり         中本みち代

大天狗掲ぐ山門雪ほたる             佳山良子

由緒ある句帳賜はり冬ぬくし           田淵さく羅

詩心は世捨心や冬ぬくし             奥村つよし

豆腐屋の喇叭寄り道冬ぬくし           森本恭生

手袋に包むひびわれ青春期            よしのしづか

賽銭のことりと響く神の留守           奥村つよし

鈴の音玉砂利の音神の留守            高石泉

選者 古賀しぐれ の2句
玻璃小春若草山を横たへて
時雨虹日矢の的なる竹生島

令和2年10月度  どんぐり句会 特選10句

人生の岐路は唐突暮の秋             墨美幸

影薄き日時計に立ち秋惜む            高石泉

百の手の触れ瓢の笛艶めける           佳山良子

ハロウインや仮面も菓子も大笑ひ         金 孝江

秋気澄む非核への鐘ひとつ打ち          山根桜香

惜秋の音とし豆腐屋の喇叭            森本恭生

ひょんの笛ひょうひょうと吹きひょうと鳴る   中島子小乃波

黙を割る瓢の笛とは摩訶不思議         田淵さく羅

音階となるまで遠し瓢の笛           高石泉

恋文に加筆一行虫時雨             よしのしづか

選者 古賀しぐれの3句
句座の末席ハロウインの面笑ふ
赤のまま赤のまんまに末枯るる
瓢の笛吹き淋しさを募らせる

令和2年9月度  どんぐり句会 特選10句

秋灯や吾に俳句のありてこそ         森本恭生

旧仮名の変換遅遅と秋灯下          森本恭生

秋灯下そばに歳時記ある暮し         高石泉

手捻りは自由につくれ秋うらら        墨美幸

秋灯下生命論と夜明けまで          よしのしづか

秋灯ジャズのしらべに更けてゆく       山下夢

父母在りし日日の夜話秋灯          中本みち代

秋灯の秋灯呼ぶやうに灯る          佳山良子

へのへのの案山子に見惚れ吉野山       山根桜香

吾を見つめつつ書に耽り秋灯下        田淵さく羅

しぐれ主宰の2句
夫は夫妻には妻の秋灯
秋灯下平家滅びのくだりへと

令和2年7月度  どんぐり句会 特選10句

月下美人に門限の有るや無し         奥村 つよし

お蔵入りなる氷柱の置きどころ        森本 恭生

女王花には闇といふ大舞台          佳山良子

美しき刹那や月下美人の夜          中島 小乃波

軽鳧の子の田水濁してよく動く        高石 泉

文月の俳句に学ぶ季語と語彙         田口 照美

秋隣篆書で書する星の文字          墨 美幸

折れてなほグラジオラスに気概あり     山根 桜香

人影は彼の人ならむ花氷          田淵 さく羅

月下美人待つ盃を交はしつつ        田淵 さく羅

選者 しぐれ主宰 3句
美しき刻を封印花氷
暑中御見舞とびきりの一句添へ
月影の下鎮魂の遠花火

令和2年6月度  どんぐり句会 特選10句

梅雨の街路面鉄路の錆の色          奥村 つよし

七変化俳句の余生楽しまん          田口 照美

燕の子自粛の日本高く飛べ          上 手毬

紫陽花に心のほどけ宵の星          墨 美幸

佐藤錦力士にあらずさくらんぼ        中本 みち代

一粒に十のしあわせさくらんぼ        高石 泉

令和二年歴史に刻む田植祭          高石 泉

杉玉の隣に育ち燕の子            山下 夢

豆腐屋の喇叭燕の子を起こす         森本 恭生

駐在所守つてをりぬ燕の子          森本 恭生

主宰 古賀しぐれ の3句
オンラインファミリー句会さくらんぼ
くちなしの花くもりのち雨の糸
屑金魚生き残りしはタローのみ

令和2年5月度  どんぐり句会 特選10句

この世とはノアの方舟聖五月        奥村 つよし

緑色通天閣の灯の涼し           山下 夢

明らかに折目が語る衣更          佳山 良子

観音へみちびくあかり夕牡丹        緦田 寿美子

断捨離に徹してをりぬ衣更         広瀬 佳子

タオル三枚もて甚平の出来上る       中本みち代

素籠りの私巣立ちの燕かな         山根 桜香

コロナ禍が紙面を闊歩五月尽        山根 桜香

天道虫浮かれゐる子の鼻に跳ぶ       墨 美幸

夏書の灯開示悟入の歎異抄         田淵 さく羅

選者 古賀しぐれ の3句
緑さす食卓朝のスムージー
一夜明け蛍袋に雨宿る
わが町に残る里山時鳥

令和2年2月度  どんぐり句会 特選10句

掌にありてやんごとのなき紙雛        田淵さく羅

内裏様袖触れ合うて飾らるる         高石泉

つんのめりさうに走る子いぬふぐり     墨美幸

手にとれば壊れさうなる紙ひひな      佳山良子

人生の満ち欠け愉し春浅し         田口照美

マジシャンのダイス開けば雛生るる    中本みち代

早春の蔀戸潜る宮雀            奥村つよし

内裏雛目鼻なくとも笑みたまふ       佳山良子

しぐれ主宰の3句
土手といふ未踏の大地犬ふぐり
婆さまのべべの袖曳くおひなさま
ソプラノの鳥声デージーの日向

令和2年1月度  どんぐり句会 特選10句

天気予報はずれし朝春隣          墨美幸

寒肥や土の目覚むる力あり         よしのしづか

おくどさん菜菜の白粥春隣         田口照美

袖当てて巫女の小欠伸春隣         奥村つよし

書初は墨と親しむこころから        墨美幸

ホ句の師も書の師も集ひ初硯        奥村つよし

想像を広げて向かふ初硯          墨美幸

梅一輪百の蕾を従へて           奥村つよし

初硯真筆は師の一句なる          田淵さく羅

教室の活気に開く梅一輪          高石泉

しぐれ主宰の3句
初硯虚子の一句をしたたむる
一輪の白もて盆梅の見頃
達筆のいろはかるたは婆の作

令和元年12月度  どんぐり句会 特選10句

紙漉のへつぴり腰に漉き上る         田淵さく羅

暮早し帰省切符の発売日           山下夢

昭和恋ひつつ寄鍋を囲みつつ         山崎和華

囲まれている紙漉の乙女かな         山崎和華

句会場紙漉工房の世界            井川よしえ

寄鍋の陀仏愚物と煮えにけり         奥村つよし

紙漉の昔昔の水音かな            奥村つよし

紙漉の水やはらかく沈みけり         墨美幸

煤逃の世捨人とは成りきれず         奥村つよし

煤逃の亭主いまだに帰らざる         山崎和華

令和元年11月度  どんぐり句会 特選10句

豆腐屋の喇叭幾度路地小春          森本恭生

ささやかな小春の心ケーキ添へ        田淵さく羅

毛糸編む心句を編む心かな          奥村つよし

冬ぬくし句座一心の一慶事          森本恭生

毛糸編む一心不乱てふみだれ         森本恭生

絵心と詩心深め句座小春           佳山良子

からからと落葉の笑ふ里日和         よしのしづか

毛糸編む事より目覚む恋心          森本恭生

小春日の光となりて一句出づ         井川よしえ

引売の笛寒々と遠ざかる           佳山良子

しぐれ主宰の3句
誕生日歳の引き算して小春
誕生日ボージョレヌーヴォーもて祝す
毛糸編むさく羅派手好き個性的

令和元年10月度  どんぐり句会 特選10句

小鳥来るやうこそ過疎の吉野へと       よしのしづか

試歩の杖赤きリボンに小鳥来る        森本恭生

肌寒や待人は来ず通り雨           山下夢

肌寒や水禍に挙措を失ひし          山下夢

句座に吊り野の趣のくわりんの実       佳山良子

座りやうなく転がれるくわりんの実      佳山良子

どんぐりの爆ぜて句会は三年目        高石泉

回しても回しても傷くわりんの実       高石泉

小鳥来るどんぐり句会三年目         田淵さく羅

慶祝の皇居の森に小鳥来る          高石泉

即位の儀祝ふ大前小鳥来る          森本恭生

しぐれ主宰の3句
一粒万倍どんぐりの育つ句座
どんぐりの大樹とならん志
一句座に秋果満載秀句成る

令和元年9月度  どんぐり句会 特選9句

村まつり若衆の恋の謀           山根桜香

一切の薬味は不用新豆腐          森本恭生

秋高しシューズデビューの一歩かな    墨美幸

路地裏に残光の影秋高し          広瀬佳子

今までのベストワンなる新豆腐       墨美幸

一笛が百の子ひろげ秋高し         佳山良子

何よりも母の作りし新豆腐         高石泉

新豆腐香の生きてをりにけり        高石泉

笛太鼓夜毎復習へり里祭          森本恭生

選者 古賀しぐれ の3句
鳶の輪の真下は淡海秋高し
生醤油を一滴二滴新豆腐
豆腐にはむらさき句座に実紫

令和元年6月度  どんぐり句会 特選10句

宗匠の書のにほひたつ団扇かな       奥村つよし

しあわせを分かち合ふかに西瓜切る     佳山良子

電球の壜と化したる水中花         高石泉

ごほうびは決まつて西瓜昭和の子      山根桜香

揚花火この世あの世と音交し        奥村つよし

書とは芸術水茎の団扇よし         高石泉

二上山の浮き上がりけり花火果つ      森本恭生

初物の西瓜にかぶりつく淑女        山崎和華

こばまざる事がたしなみビール干す     山崎和華

選者 古賀しぐれ の4句
さく羅てふ花咲婆水中花
水茎の華のしたたる白団扇
さく羅マジシャン電球の水中花
上品に食べては西瓜不味くなる

令和元年6月度  どんぐり句会 特選10句

メロン食ぶ沖の白波又くづれ        上野勝治

青梅雨や書肆のともし火また一つ      上野勝治

賞味日が美人とメロン置きてあり      井川よしえ

世濯に星の応援ありにけり         井川よしえ

夜濯の憂さも流してしまひけり       森本恭生

百合の花句座の起居に香の動く       佳山良子

夜濯や試験の出来を顧みる         墨美幸

打水や京都六角富小路           上野勝治

夜濯の上を過ぎ行く長き貨車        森本恭生

豆腐屋の喇叭灼けつつ路地曲る       森本恭生

令和元年5月度  どんぐり句会 特選10句

彼の君の胸に捧ぐるアマリリス       山崎和華

伊勢大和分くる水分新樹冷         森本恭生

風に誘はれアマリリスのビブラート     山根桜香

十薬の蕊高高と盛りなる          高石泉

今日を咲く一途なる色アマリリス      佳山良子

十薬や昔の知恵の葉の力          中本みち代

万緑をなほ鮮やかに今日の雨        高石泉

アマリリスぱつと明るき雨の句座      高石泉

誰彼に微笑みくるるアマリリス       山崎和華

吾の横にあなたが座るアマリリス      田淵さく羅

しぐれ主宰の3句
雨の日は雨を喜びアマリリス
十薬や墳墓へ至る白十字
十薬の路地短調の雨雫

平成31年4月度  どんぐり句会 特選10句

春灯蔵王堂へと誘へり           宮川美枝子

種をまく吾子の背中に風の吹く       山根桜香

吹かれゐてポピーの色の交わらず      佳山良子

平成も令和も長閑のら仕事         山根桜香

犬が陣取る玄関の長閑なり         中本みち代

退屈や句座の机上の鯉のぼり        佳山良子

鯉幟御饌田を統ぶる風の舞         奥村つよし

紅白は句座への祝意花水木         奥村つよし

譲られし母の文机カーネーション      田淵さく羅

とりどりの庭の花挿し春灯         田淵さく羅

平成31年3月度  どんぐり句会 特選10句

花乏しくもにぎやかに花見酒        高石泉

これからの花に人来る光来る        井川よしえ

連翹の水に触れたき枝垂れやう       奥村つよし

住吉の君と名付けん初桜          奥村つよし

花人のやうに歩くは夫婦鳩         墨美幸

迷うても桜並木はすぐわかる        井川よしえ

初花を探す恋人探すかに          森本恭生

初蝶は相手替へつつジルバかな       奥村つよし

豆腐屋の喇叭は素面花の昼         森本恭生

待つ心待たせる心花衣           宮川美枝子

平成31年2月度  どんぐり句会 特選10句

懐に抱かれきし子と雛まつる        山崎和華

笑ひ声聞こえて来さう紙雛         佳山良子

一句より一首詠みたし雛の宿        奥村つよし

対といふ美しき影ひな飾る         佳山良子

雛壇に上げたきやうな男子かな       森本恭生

百代の過客の愛づる梅桜          山根桜香

紙ひひな袂ゆつたり飾らるる        高石泉

これはまあ宴の最中雛屏風         高石泉

雛の眉三日月形に描き上げぬ        高石泉

雛屏風この世あの世を隔てゐし       佳山良子

平成31年1月度  どんぐり句会 特選10句

煮凝やリストの流れ来る厨         田淵さく羅

盆梅に落つる人影濃かりけり        田淵さく羅

磨きあげられし柱の初暦          山崎和華

盆梅の育みし日日重ね見る         佳山良子

煮凝の味は魚にまかせたる         井川よしえ

書き上げし写経一巻梅早し         森本綾女

買初は大社由来の縁起物          奥村つよし

淳さんの逝きし日記す初暦         田淵さく羅

煮凝や無口な夫と箸をとる         山崎和華

選者 古賀しぐれ主宰の4句

初暦墨書の語る未知の日日
さく羅の句さく羅の書鳴る初暦
為人語る水茎梅真白
白梅やにほふがごとき汝の墨書
煮凝や生涯浦曲住ひなる

平成30年12月度  どんぐり句会 特選10句

悦びの歎きのことば息白し         山根桜香

クリスマスサンタは吾にお任せを      田淵さく羅

熱燗を重ね絆を深うせり          山崎和華

季寄とはホ句のバイブルクリスマス     奥村つよし

この一句リボンを掛けてクリスマス     井川よしえ

神崇め仏敬ひクリスマス          奥村つよし

クリスマス一色となる句会場        高石泉

喜寿迎へたる日の燗を熱うせる       山崎和華

熱燗を重ね齢を重ねたる          山崎和華

消えさうで消えぬ一燭クリスマス      田淵さく羅

しぐれ主宰の3句
一燭の許なる句会クリスマス
クリスマス句会はさく羅プロデュース
サンタクロースは泉婆さく羅婆

平成30年11月度  どんぐり句会 特選10句

日の匂ひ捩り切干仕上りぬ         佳山良子

初しぐれよと拳をかざしけり        山崎和華

頼りなく見えて気丈夫花八手        田淵さく羅

柊の花の日向ノポストかな         山崎和華

初しぐれして詩心旅心           奥村つよし

柊のやがて怪しき香に酔ひぬ        奥村つよし

大ぶりに活けて花柊淋し          佳山良子

花柊一壺にあふれ香のあふれ        森本恭生

柊の花零しつつ担ぎくる          高石泉

安曇川の遠ざかりゆく初時雨        森本恭生

古賀しぐれ主宰の3句

一燭の百畳伽藍時雨冷   

花八手豆腐屋の来る午後三時

花柊裏鬼門守る雲母坂

平成30年10月度  どんぐり句会 特選10句

悲しみは過ゆくほどに秋の逝く        佳山良子

はやばやと吉野の山気柿紅葉         高石泉

染めあがりたりし吉野の柿紅葉        山崎和華

掌に染まるほどの紅葉を吉野より       田淵さく羅

七五三子等よりもらふ五七五         森本恭生

無口なる夫に柿剥く我に剥く         山崎和華

観て食べて秋を堪能して句会         井川よしえ

吉野より速達便の柿紅葉           森本恭生

柿を食む日のぬくもりを食みにけり      佳山良子

木の実落つ音の重さを聞き分けて       森本綾女

選者 古賀しぐれの5句

干し柿も俳句も作り古女房
蒼天の塔軒の端に吊し柿
柿売るや法起寺前の軒を借り
み吉野の夕日の色の柿紅葉
柿の秋蒼天深き塔の里

平成30年9/20月度  どんぐり句会 特選10句

秋草を活け野の風を招きけり         中本宙

独り居の晴耕雨読秋茄            田淵さく羅

コスモスや優しくゆらぐ里の家        田口照美

ダンディに華を添へたる赤い羽根        森本恭生

柏手に鈴もて応へ神の虫        奥村つよし

初めての句座コスモスの揺るるごと     奥野とほる

松茸の値段を見たし見たくなし       森本恭生

写し絵の夫と分け合ふ松茸飯       指吸美羽

松茸に一献加へ白寿かな        宮川美枝子

住之江は昭和の匂ひ秋茄子        田淵さく羅

選者 古賀しぐれの3句

流麗なさく羅の書跡秋団扇
駅頭は風禍の名残赤い羽根
松茸や金の蒔絵の輪島塗

平成30年7月度  どんぐり句会 特選10句

臨月の人も加はり句座涼し         田淵さく羅

汗納めやつと仕上るこの一句         井川よしえ

神の門堅く閉ぢたる大暑かな         奥村つよし

向日葵のやうな妻としつき添はん      山崎和華

玉の汗働く事の美しき          上手毬

俳句とは知力体力汗みどろ        佳山良子

推敲の活力となり紫蘇ジュース         森本恭生

金魚藻の揺るる湧水伊吹山より          中本宙

被災地に汗また汗の輪が光る          山根桜香

青りんご俄かに卓の野趣めける         佳山良子

平成30年6月度  どんぐり句会 特選10句

文字摺草大和を愛ずる一句集     田淵さく羅

この時間豆腐屋の来る軒忍      田淵さく羅

大阪の喧騒遁れ釣忍        奥村つよし

蚊遣香つける燐寸に覚えあり     森本恭生

カラフルな別品野菜夏の朝      宮川美枝子

釣忍には正面といふはなく       田淵さく羅

桐箱のいちご粒よりてふはこれ       佳山良子

豆腐屋の喇叭蚊遣火ある暮し        森本恭生

少年は素直に育ち文字摺草          高石泉

其の上の長屋暮しや釣忍          山崎和華

古賀しぐれ主宰の3句
蚊火炊くや湖宿に酌む昼の酒
軒忍ゆふべの風は淡海より
大琵琶の夕闇まとひ蚊遣香

平成30年5月度  どんぐり句会 特選10句

泰山木一花が句座の王なりし     高石泉

何とまあ句座に泰山木一花     上手毬

錆びゐても品あり泰山木の花    佳山良子

御朱印の巫女の手白き青葉闇      奥村つよし

新茶古茶啜り利休の話など      奥村つよし

歩を合す盲導犬や若葉風       上手毬

豆飯をにぎり句会へいざ行かん      高石泉

天晴や新茶染み入る和のこころ      山根桜香

出生は泉邸とや夏の茱萸      佳山良子

大切に生きてゐますよアマリリス     田淵さく羅

しぐれ主宰の三句

天の花泰山木は地に錆びぬ

詠み人は佳人でありしアマリリス

新茶潦れくれ古町の句座親し

平成30年4月度  どんぐり句会 特選10句

風車廻して遠き日をそこに      佳山良子

魔法の手祖母より生る草だんご     広瀬佳子

軒先を借り草餅の売られをり       中本宙

句会へと罷り越したる鯉幟       山崎和華

子育の奥義に適ふ桜守         中本宙

止まりつつ色解しつつ風車        佳山良子

立姿乙女のやうな花あやめ        広瀬佳子

人生の起承転結桜かな        中本宙

物の怪を祓ふる幣に若葉風       奥村つよし

雛ぶりの色濃かりけり蓬餅       高石泉

しぐれ主宰の句
句座日永公民館を借り切つて
宴果て一人の庭の桜餅
さく羅ぐんぐん廻れ風車

平成30年2月度  どんぐり句会 特選10句

吾が折りし雛のかなり臈たけて      田淵さく羅

大原女の声遠くより水菜売         奥村つよし

シャキシャキと水菜切る音水の音      森本綾女

遺さるる卒寿の母の祈りし雛        宮川美枝子

土旨し水菜旨しと和泉より        田淵さく羅

雛の日句座に迎ふるニューフェース     山崎和華

無聊なる日日重ねをり二月尽       中本宙

紙雛おぼつかなくも立ちたまふ       佳山良子

いぬふぐり汐掛道にたれを待つ       奥村つよし

たんざくの五色に綴る雛の句       上手毬

選者 古賀しぐれ の句

句座溢れをり手作りの雛明り
新参に弾む句心迎春花
迎春花空へと放つ詩心

平成30年1月度  どんぐり句会 特選10句

水仙に真向うてゐる男はん      山崎和華

水仙の密かに香る午後の卓       佳山良子

初暦先づは句会の日を書きぬ      上手毬

筆跡に吸い込まれゆく初暦       高石泉

うつつ世の光を抱き室の花       奥村つよし

水仙の風を添はせて活けにけり     井川よしえ

月光の望郷岬野水仙         中本宙

日脚伸ぶ区長の覗く句会上       上手毬

水仙花巫女の起居をふと見たり      奥村つよし

読めずとも漢詩輝く初暦        奥村つよし

しぐれ主宰の3句

一軸の一筆勢ひ水仙花
俳人のなべて福相実千両
掌中の珠なる句会室の花

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